2017 Fiscal Year Research-status Report
癌幹細胞によるニッチ構築の分子細胞基盤とその制御-鉄欠乏応答からのアプローチ
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17K07156
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
椨 康一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (10466469)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | がん / 癌幹細胞 / ニッチ形成 / 鉄欠乏 / 単球 / CCL2 / レポーター細胞 / 不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん微小環境の形成機構を明らかにすることは治療選択肢に乏しい難治性のがんに対し新たな治療戦略を提案できると考えられるが、その詳細は十分に解明されていない。これまでの研究で癌幹細胞が微小環境(ニッチ)を構築する巧みな生存戦略を執ることを明らかにしてきた。このような適応性の高い癌幹細胞の解明と制御を目指して、本年度はニッチ構築に関わる機能分子の検証と、それを発現するサブセットの分離法の確立に取り組んだ。鉄欠乏時に癌幹細胞で発現の上昇する分子のひとつに単球動員因子CCL2を見出したことから、その受容体CCR2を発現するマウス骨髄由来単球の遊走アッセイを行ったところ、癌幹細胞は高い単球誘引活性を示した。さらにその作用はCCR2の阻害によって抑制されたことから、癌幹細胞由来のCCL2は単球動員に寄与する機能分子であることが示された。次にCCL2は一部の癌幹細胞に発現していたことから、そのニッチ構築サブセットを分離するための細胞表面マーカーを探索した。GlioVisを用いたグリオーマ患者の遺伝子発現データの解析から、CCL2と発現の相関する表面マーカーとしてCD44とCXCR4を抽出したが、何れも培養細胞での検証で明らかな発現相関を認めることはできなかった。そこで内在性CCL2遺伝子の下流に緑色蛍光遺伝子copGFPをノックインするゲノム編集を施し、ニッチ構築機能分子であるCCL2の発現を維持したCCL2レポーター細胞を樹立した。癌幹細胞内のcopGFPの発現に不均一性の存在することや鉄欠乏時にcopGFPの発現が上昇することも確認され、ニッチ構築の一端を担う癌幹細胞サブセットの分離と可視化が達成された。一方でcopGFP陽性細胞が高いスフィア形成能と薬剤耐性を示すことも見出しつつあり、これら単球動員細胞の再発への関与が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
癌幹細胞のニッチ形成に寄与する機能分子としてCCL2の同定と立証が円滑に進んだ。細胞内ストレス応答の解析をするために陽性細胞の分離を試みようとしたが、同定したCCL2が分泌因子であったことから、発現相関を示す細胞表面マーカーの探索に時間を費やした。マーカーの同定には至らなかったものの、ゲノム編集によるアプローチが功を奏し、当初次年度以降に予定していたニッチ構築癌幹細胞の分離と可視化が既に達成された。これにより、次年度は担がん個体におけるストレス適応動態の解析や、細胞内ストレス応答の分子機構、制御化合物のスクリーニングへと円滑な展開を見込める状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立したレポーター細胞を用いて、ニッチ構築癌幹細胞の時空間的な動態を担がんマウスで追跡する。特にテモゾロミド抵抗性や再発への寄与を個体レベルで検証し、がんの再発源・治療標的としての可能性を追究する。またがん進展に伴う微小環境変化との相互関係も明らかにする。さらにニッチ構築癌幹細胞を単離して、細胞内ストレスセンサーや下流のニッチ構築分子、新たなニッチ要素の同定を図り、癌幹細胞によるニッチ構築の分子基盤を確立する。最後にニッチ構築癌幹細胞の人為的制御を目指した化合物スクリーニングを実施して、ニッチの形成阻害、および現行の治療法との併用によるニッチの破綻を目指す。
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Causes of Carryover |
細胞分離用マーカーの探索に時間を費やしたため当初予定していた分子解析に至らず、未使用分が発生した。一方で当初の計画と逆転したが、次年度に予定していた機能集団の分離技術を確立できたため、今後は分子解析の飛躍的な進展も見込める。そのほかサブセットの培養器具、担がんモデル作製用の免疫不全マウスの購入、組織学的解析試薬、RNA-Seq・質量分析の委託費用、および学会参加費に使用する計画に関しては、当初の予定通りである。
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Research Products
(10 results)
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[Book] 次世代がん治療2017
Author(s)
椨康一、田賀哲也
Total Pages
386
Publisher
株式会社エヌ・ティー・エス
ISBN
978-4-86043-503-5 C3045
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