2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒト・マウスでの右側鋸歯状大腸発癌の生物学的メカニズムの解明
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17K07163
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
原 明 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10242728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 弘之 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (50509510)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず岐阜大学病院の内視鏡あるいは、外科手術の標本を用いて、免疫組織化学染色を行った。その結果、Ki67染色にて、過形成ポリープ(32例)とSSA/P(31例)とは1腺管あたりの増殖能については差がなかった。そこで、老化に注目した。老化因子であるp16腫瘍抑制遺伝子の免疫染色を行うと、p16陽性細胞は分岐部や底部に多かった。また、p16陽性細胞とKi67陽性細胞は、局在はほぼ一致しなかった。つまり、「増殖能が高まり、過形成ポリープとなった→何らかの原因でp16陽性細胞により増殖停止細胞(老化細胞)が散発性に出現→それにより、増殖と停止(老化)の細胞がまだらとなり、特殊な形態が形成されているようだ」ということが示唆された。さらに、HE染色にて過形成ポリープ(32例)とSSA/P(31例)との間に、陰窩上皮細胞内リンパ球浸潤が有意に増加していることを見出した。腸管上皮細胞間にはリンパ球(intraepithelial lymphocytes, IEL)が存在することが知られ、腸管内の異物に対する免疫防御に関与すると考えられている。IELの大多数(>90%)は成熟T細胞で、TCRγδ+細胞の割合が高く、末梢T細胞とは大きく違う性質を持つ。つまり、IELは末梢T細胞と異なるユニークなT細胞サブセットから構成されており、腸管に固有の生理的役割を担うと考えられている。今回、申請者はこのIELの局在と数を詳細に調べ、過形成ポリープとSSA/Pにおける形態の違いにも寄与している可能性を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の免疫染色の結果を得られた。次年度の計画に移ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、また、過形成ポリープやSSA/P病変にも、大腸上皮内へのリンパ球侵入がみられた。これは、現在悪性黒色腫や肺癌に対して、非常に強力な抗腫瘍効果を示し、大腸癌への臨床投与も期待される抗PD-1抗体(リンパ球活性化剤;オブジーボ)との関連が推測される。我々は、いち早くこの関連を世界に先駆けて示すため、上記のヒト標本で上皮内リンパ球の局在・数そして、PD-1抗体による免疫染色を行っている(29年度後期から30年度前半に結果を得る予定)。
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