2017 Fiscal Year Research-status Report
The roles of Lats1/2 kinases in a stepwise EMT-MET switching mechanism of malignant tumor cells.
Project/Area Number |
17K07167
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藪田 紀一 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (10343245)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 上皮間葉転換 / 口腔扁平上皮癌 / 細胞増殖 / 悪性化 / Hippo経路 / LATS / リン酸化 / TGF-β |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、癌細胞が上皮間葉転換(EMT)と間葉上皮転換(MET)を連続的に繰り返すことによりさらに悪性度が高い癌細胞に形質転換する「EMT/MET段階的連続転換機構モデル」を提唱し、この分子機構においてHippoシグナル経路関連キナーゼであるLATS1とLATS2が主要な役割を果たしていることを明らかにすることを目標とする。実験はほぼ計画どおり順調に進み以下の研究成果を得た。[1] 口腔癌由来の扁平上皮癌細胞株SASからTGF-β処理の有無によりEMTとMETを連続的に誘導し細胞運動能を指標にして新たに樹立したSAS-δ細胞株について悪性度を調べた。SAS-δ細胞は細胞間の接触阻止を無視して積み上がるように異常増殖し、親株であるSAS細胞より高い増殖率を示した。一方で、TGF-β非存在下ではマトリゲルインベージョンチャンバーを用いたin vitroの遊走性および浸潤能はSAS細胞よりも低下した。[2] In vivo実験として、ヌードマウス舌癌モデルの実験系を利用して、SAS-δ細胞を舌移植し、マウスの生存率および体重変化を経時的に観察したところ、SAS細胞を移植した場合と比較して有意な減少を示した。また、SAS-δ細胞を移植した舌の病理解析では移植した癌細胞が浸潤している様子が観察された。これらの結果から、生体内における舌癌の悪性化にはTGF-βのような細胞外因子が重要な役割を果たしていることが示唆される。[3] Hippo経路関連蛋白質の発現量および活性化を調べたところ、SAS-δ細胞ではHippo経路の一部に破綻が確認された。[4] さらに、LATS1/2キナーゼがEMT関連転写因子であるSLUGの特定のアミノ酸残基をリン酸化することを見出した。今後は、SAS-δ細胞におけるLATS1/2によるSLUGのリン酸化の生理的意義を明らかにするために解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
口腔癌由来の扁平上皮癌細胞株SASから新たに樹立したSAS-δ細胞株の悪性度を評価する実験として、[1]形態変化、[2]細胞増殖能や増殖様式、[3]遊走性(migration)、[4]浸潤能(invasiveness)に関する諸実験を行い、SAS-δ癌細胞株の異常な増殖形態とマウス舌移植における浸潤能を見出すことができた。また、その分子機序の一端としてLATS1/2キナーゼとこれらを介したHippo経路の異常を見出した。さらに、LATS1/2キナーゼの新たなリン酸化標的として上皮間葉転換(EMT)制御因子のひとつであるSLUGを同定しリン酸化部位を決定した。以上のことから、本研究は予定以上に順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画どおり推進する。引き続き、SAS-δ細胞株を用いて悪性癌細胞における段階的なEMTとMET(間葉上皮転換)の連続転換機構におけるLATS1/2の役割を明らかにするために解析を進めていく。LATS1/2がSLUGを特定の部位でリン酸化することを突き止めたのでLATS1/2によるSLUGのリン酸化の生理的意義およびHippo経路の異常との相関関係を明らかにしていく。また、SAS細胞は高い癌幹細胞性を持つことが報告されているので、癌幹細胞におけるLATS1/2の役割に関しても予定どおり実験を進めていく。
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Causes of Carryover |
今年度は、大きな実験の失敗なども無く、当初の計画以上に実験を順調に進めることができた。実験の失敗などが少なかった分、無駄が少なかったため予定していたよりも支出を抑えることができたが、論文投稿に向けた追加実験や論文投稿後のリバイズで大量の実験を要求されることが今後予想されることから次年度も計画どおり実験を推進するために次年度使用額が生じた。
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