2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K07172
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
飯森 真人 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (20546460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北尾 洋之 九州大学, 薬学研究院, 教授 (30368617)
沖 英次 九州大学, 大学病院, 診療准教授 (70380392)
佐伯 浩司 九州大学, 大学病院, 講師 (80325448)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞質分裂 / ミッドボディ / OGG1 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体不安定性はがん細胞に広く見られる染色体分配異常であり、がんの悪性形質獲得や抗がん剤耐性獲得の要因であると考えられている。本研究では、細胞質分裂の完了に関与するOGG1の分子機序を明らかにする基礎研究を行い、さらにがん患者由来の臨床検体を用いてOGG1発現プロファイルと染色体不安定性の関連性を検証することで、OGG1の関与する細胞質分裂不全の分子病態と染色体不安定性の全体像を明らかにし,染色体不安定性を標的としたがん治療の可能性にアプローチするための学術的基盤を確立することを研究目的とした。 まず細胞質分裂の二細胞への切断遅延誘導に対するOGG1 関与を確証するために,ゲノム編集技術(CRISPR/Cas9 システム)を用いてOGG1 遺伝子ノックアウト細胞の樹立を試みた。当初はHeLa細胞を用いてOGG1ノックアウト細胞の樹立を試みたが,HeLa細胞が高度の異数性細胞であるためノックアウト細胞は樹立できなかった。現在正倍数性細胞であるHCT116細胞株を用いて再度OGG1ノックアウト細胞の樹立を試みている。また,OGG1ノックダウンにより見出された細胞質分裂の二細胞への切断遅延の詳細観察を可能とする染色体と細胞質分裂期ブリッジの構成成分であるチューブリンの可視化細胞を樹立した。現在ライブイメージングによる詳細観察を行っている。また細胞質分裂期におけるOGG1の局在性を明らかにするために,OGG1特異的抗体を用いた蛍光免疫染色やOGG1-FLAGタンパク質を発現させた細胞をFLAG抗体で蛍光免疫染色を行い,ミッドボディーと呼ばれる細胞質分裂期ブリッジの切断部位に形成される構造体部位へのOGG1局在が観察された。 以上より、細胞質分裂期においてOGG1がミッドボディ因子の一員として細胞質分裂期ブリッジの切断への関与を強く示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究申請時の研究計画では平成29年度―31年度の研究予定期間のうち、はじめに基礎研究として細胞質分裂の完了に関与するOGG1 の分子機序を明らかにする基礎研究を行い、さらにがん患者由来の臨床検体を用いてOGG1発現プロファイルと染色体不安定性の関連性を検証することで、OGG1 の関与する細胞質分裂不全の分子病態と染色体不安定性の全体像を明らかにすることを予定した。 平成29年度はOGG1が細胞質分裂に関与する分子機序の解明に向けて,細胞質分裂の二細胞への切断遅延誘導に対するOGG1 関与の確証および酸化ストレス除去因子とは異なる、細胞質分裂で特異的に有するOGG1 機能の検証を計画した。研究開始時に得られていた生命現象の解析における進捗は、研究実績の概要に示したとおりOGG1 関与する生命現象の多方面からの確証を得ることができたと考える。さらにOGG1の酸化ストレス除去因子としての機能を阻害する阻害剤の存在下においてOGG1遺伝子ノックダウンとの表現型の一致を観察できなかったことより,OGG1が細胞質分裂で特異的な機能を有することが強く示唆された。 またがん臨床検体を用いたOGG1発現プロファイルの観察を胃がん,大腸がん,肺がん等の臨床検体を用いて免疫組織化学染色法によりOGG1発現量の評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成30-31年度には、これまでに得られた基礎的な知見をもとに、当初予定した方針の通り臨床応用を見据えた知見を得ることを目的とした研究を進めていく。細胞質分裂の完了に関与するOGG1の分子機序を明らかにする基礎研究に関しては,時期特異的なタンパク質分解誘導系であるオーキシンデグロン法を用いてOGG1を分裂期特異的に分解することでOGG1が細胞質分裂で特異的な機能を有すること証明する。また,すでに細胞質分裂期ブリッジの切断部位に形成されるミッドボディにOGG1が局在することを見出している。ミッドボディには多くのタンパク質が局在して協調的に切断に関わることが知られており、OGG1 がどのような因子と結合し機能的に切断に関与するのかを明らかにするため、OGG1 遺伝子にタンデムタグ(FLAG-HA タグ)を融合させた融合遺伝子の安定発現細胞株を樹立し、OGG1 の結合因子群を質量分析により同定する。OGG1 と同定された結合因子との免疫共沈降や共局在性の観察を行い、生理的な結合因子としての検証を行う。また、既知因子との機能的・局在的ヒエラルキーを決定するために、既知の切断責任因子の局在性がOGG1 によって制御されるかをOGG1 ノックダウンやノックアウト細胞を用いて明らかにする。さらに,これまでに行ったがん臨床検体を用いたOGG1発現プロファイルの観察結果について,がん部におけるOGG1 発現量の有意な変化を検証したのちに同一症例においてさらに染色体不安定性をLSC 解析やFACS 解析を用いたゲノムDNA 含有量で観察し、さらにがんの進行度および予後との関連を統計解析することで、OGG1 の発現量と染色体不安定性およびがん病態との関連性を明らかにする。
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Research Products
(1 results)