2019 Fiscal Year Research-status Report
Directional migration of cancer cells under metabolic gradients
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17K07173
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
高橋 英嗣 佐賀大学, 理工学部, 教授 (30206792)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | がん / 細胞遊走 / 遠隔転移 / 酸素濃度勾配 / pH勾配 / 微小流体素子 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究における重要な研究ツールである微小流体素子のgap cover glass(GCG)について、これまで測定してきた細胞外pH勾配に加え、細胞外酸素濃度勾配の測定を行った。測定には酸素濃度依存性に蛍光強度の変化する酸素感応性膜を用い、絶対値測定を行った。その結果、細胞外酸素濃度勾配は、予想通り単位体積あたりに存在する細胞のミトコンドリア呼吸により決定されること、また今回の実験条件ではその絶対値は約6% O2/mmであることが判明した。この場合、細胞遊走を調べた領域の酸素濃度は10%をはるかに上回るものとなり、HIF-1α依存性メカニズムは考えづらいことが結論された。以上より、懸案の問題であったpH勾配と酸素濃度勾配のどちらが、より細胞遊走の方向性に関与するかについて一定の結論が得られた。 また、pH勾配をcueとした方向性遊走のメカニズムとして、数百ミクロンのスケールの細胞外pH勾配が細胞の遊走に方向性を付与するというモデルを新規に考案し、その妥当性をコンピュータシミュレーションで検討した。このモデルにより単一細胞レベルではほとんど無視できるような微小な細胞外pH勾配が、マクロレベルでは多数の細胞の平均的な遊走方向を決定することを示した。 これまでの研究で細胞外pH勾配の重要性が明らかとなったが、さらにこの結論を補強するために、bulk mediumのpHを6.8, 7.2, 7.6に変化させ、細胞遊走を検討した。いずれの場合も方向性遊走が証明されたが、方向性の強さはpH 6.8と7.6で有意に減弱した。 以上より、臨床的には固形腫瘍組織内pHに介入する方策が遠隔転移の確率を低下させる可能性を示唆した。以上の結果の一部は論文として投稿した。(2020年4月6日にInt J Mol Sci誌(2018年インパクトファクター 4.183)に受理された)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞外pH勾配をcueとした細胞遊走の方向性の誘導を説得力のある新規手法を用いて証明することに成功し、さらにその分子メカニズムのコンピュータモデルを提案できたことは、大きな成果である。一方で、この成果をin vivoに展開するには時間が不足であった。以上より”おおむね”順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回は投稿した論文のAPC請求が年度を越えることが予測されたため、補助期間の延長をお願いした。そのため、研究費はAPCを除き予定通り2019年度で使い切ったため、今後、新規の実験を立ち上げるのは難しい。今後は一般運営費を利用し、結果を補強する実験を行い、また学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
論文を3月に投稿したが、投稿料(APC)は論文のacceptをもって支払いとなるため4月以降となる可能性が高かった。そこで、科研費による補助期間を1年延長していただくよう手続きするとともに年度内の支出を抑制し、次年度のAPC支払いを可能とした。
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