2020 Fiscal Year Annual Research Report
Directional migration of cancer cells under metabolic gradients
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17K07173
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
高橋 英嗣 佐賀大学, 理工学部, 教授 (30206792)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | がん / 血行性遠隔転移 / 細胞遊走 / pH勾配 / 酸素濃度勾配 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの3年間の研究の成果をまとめInternational Journal of Molecular Sciences誌(2019年のインパクトファクターは4.556)に投稿した。投稿は令和2年3月22日だったが、受理およびAPC(投稿料、1800CHF)支払いが次年度つまり当初の補助事業期間終了後となることが予測されたため、補助事業期間の1年延長を申請した。論文は令和2年4月6日に受理された。 これで科研費の残額は0となったが研究自体は継続し、以下に述べる成果をあげた。1.細胞外培地のpHを6.8, 7.2, 7.6に変化させ細胞遊走を検討したところ、細胞外pH勾配下で、いずれの場合にも方向性遊走が証明されたが、その強さはpH 6.8と7.6で有意に減弱した。この結果は、細胞の遊走速度が細胞外pHにより単峰性に変化することが、細胞の遊走に方向性を付与するというわれわれのモデルに合致する結果である。2.これまでの実験は、pH勾配をcueとした方向性遊走誘導の有無に焦点をあてるため、細胞外環境の酸素濃度を、あえて非生理的な高レベルに設定していた。今回は、酸素濃度を生理的な範囲(~5%)とした時に、pH勾配を消失した状態で方向性遊走が誘導されるかを検討したところ、方向性遊走はみられず、細胞外酸素濃度勾配はMDA-MB-231細胞において方向性遊走のcueとはならないことがわかった。 以上、本研究において、0.2 units/cm程度の比較的緩やかな細胞外pH勾配が、MDA-MB-231細胞の遊走に方向性を付与するcueでありることを最終的な結論とし、将来、組織レベルでpHを制御することで、がんの転移を抑制できる可能性を示した。なお本年度の成果は、国際学会ISOTT2021(本年7/25-30にオンライン開催)で発表予定である。
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