2019 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of markers and mechanisms of NASH-associated liver cancer
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17K07177
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
梯 アンナ 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (60382222)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発がん / 発がんマーカー / 動物モデル / NASH |
Outline of Annual Research Achievements |
NASHモデルTSODマウスでは、ヒトNASH様の組織変化を背景として多数の変異細胞巣や肝腫瘍の発生が認められた。肝臓腫瘍では脂肪沈着、線維化やペルオキシソームの増加が観察され、細胞増殖やアポトーシスの有意に上昇した。変異性細胞巣では8-OHdGの増加が観察された。メタボローム解析によりTSODマウスの腫瘍では糖代謝物質、L-arginine、ATP、GTP、SAM/SAHの有意な上昇及びglycineやmethionineの有意な減少が見られた。また、P-Akt、P-PI3K、P-ERK及びP-mTORの増加とarginase1(Arg1)の抑制が見出された。ヒトのNASH関連肝細胞癌においてArg1陰性の患者の生存率がArg1陽性の患者に対して有意に減少した。現在の結果からブドウ糖代謝物質とL-arginineの上昇及びNASHにおいてのArg1発現の減少とmTOR経路の活性化はNASH関連の肝細胞癌の主要な特徴であることが考えられた。また、STAMマウスの肝臓腫瘍及び変異性細胞巣におけるcache domain containing 1 (CACHD1)の有意な過剰発現が見られ、CACHD1がNASH発がんにおける前がん病変マーカーになりうる可能性が示唆された。これに加えて、ヒトNASH肝細胞癌におけるCACHD1の高発現と患者の生存率の減少の有意な相関が認められた。HepG2及びHuh7ヒト肝癌細胞株を用いてCACHD1をノックダウンした細胞にオートファジーや細胞骨格関連蛋白質の有意な発現減少及びNrf2やc-mycの抑制が認められた。免疫染色解析ではSTAMマウスの前がん病変及び腫瘍においてオートファジーマーカーであるAtg12の抑制とp62の有意な上昇が見られ、CACHD1がオートファジーを抑制することによって、NASH肝発がんを促進することが明らかとなった。
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Remarks |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、非飲酒者で肝炎ウイルスなどの他の原因となる肝疾患が除外された疾患の病態の一つであり、肝細胞癌発症の背景疾患として注目されています。我々はNASH由来の肝癌発生に着目し、NASHモデルマウスを用いた肝臓の病態および肝細胞癌発生から発がん機序解明とともに、早期病変マーカーの同定を試みています。また、ヒト肝細胞癌組織を用いた臨床材料によるヒトへの外挿を行っています。
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