2018 Fiscal Year Research-status Report
NPM変異体とIDH変異体による協調的な急性骨髄性白血病発症メカニズムの解明
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17K07188
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
小川原 陽子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (30599626)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | AML / NPM / IDH2 / Hoxa9 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病(AML)の3割が伴うNPM(Nucleophosmin)の変異体(NPMc)は、IDH変異を高頻度に伴う。私はNPMcとIDH2 変異体が協調的に造血系前駆細胞でHoxa9の発現を誘導し、マウスモデルでAMLを発症させることを既に見出していた。本研究ではNPMcとIDH変異によるHOXA9発現制御メカニズムの解析を行い、2017年度の研究では、NPMcはHoxa9遺伝子座に活性化ヒストン修飾を増加させ、IDH2変異体はHoxa9遺伝子座から抑制的ヒストン修飾を減少させ、両者の協調的な作用によりHoxa9の発現量が顕著に増加することを見出した。2018年度は、NPMcの分子機構の解析を行い、以下の研究結果を得た。NPMcは野生型NPMに結合してその局在を核小体から細胞質へと移行させる。造血系前駆細胞からNPMをノックダウンしたところ、Hoxa9の発現量が増加した。また、NPM dNuls(核小体から核質に局在が変化する変異体)を発現させると、Hoxa9の発現量が増加した。以上の結果から、NPMcはNPMを核小体から取り除くことによりHoxa9の発現誘導に寄与しているという新しい知見が得られた。NPMcは細胞質に局在するという特徴があるために細胞質にフォーカスしてしまいがちだが、NPMの核小体における本来の機能を損なわせることがNPMcの役割であることが示唆された。核小体におけるNPMの役割をより明らかにすることが重要であるという、今後の研究の方向性を定める重要な情報が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NPMcはNPMを核小体から取り除くことによりHoxa9の発現誘導に寄与している、という非常に興味深い知見を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が開発したNPMc+AML発症マウスの系を用いて、in vivoでのNPMcの機能解析を行う。in vitroでみられたヒストン修飾状態の変化がin vivoでもおこっているかどうかを検証する。さらに、NPMcをloxp配列で挟み込んでおき、AML細胞にcreの発現を誘導して変異遺伝子をノックアウトすることにより、NPMcがAML幹細胞性の維持に必要であるかどうか、すなわちNPMcの機能を阻害することがAMLの治療戦略として正しいかどうかを明らかにする。 NPMcはNPMを核小体から取り除くことによりHoxa9の発現誘導に寄与している、という非常に興味深い知見が得られた。近年、核小体が遺伝子発現を抑制する場になっていることが報告されており、NPMがHoxa9領域に直接作用している可能性も考えられる。NPMが核小体に局在することによりどのようなメカニズムでHoxa9の発現を抑制しているのか、解析を行う。
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Causes of Carryover |
物品の価格変更等により当初の計画通りにはいかなかったため。 次年度の物品費として使用する予定である。
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