2018 Fiscal Year Research-status Report
T細胞最終分化系譜の分子機構の解明と腫瘍免疫への応用
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17K07215
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤木 文博 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授(常勤) (40456926)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ターミナルエフェクターT細胞 / メモリーT細胞 / 癌免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌免疫療法において、分化段階をターミナルエフェクターではなくメモリーT細胞に留めた癌抗原特異的T細胞を効率的に誘導する方法が求められている。しかしながら、メモリーT細胞がターミナルエフェクターT細胞に分化する分子機構は明らかでない。そこで本研究では、申請者が発見したT細胞自身の代謝産物によるターミナルエフェクターT細胞分化促進メカニズムを詳細に解析することで、T細胞の分化制御および効率的なメモリーT細胞誘導方法の開発に貢献することを目的とする。 我々は、T細胞自身がビタミンAを代謝し、活性化型に変換することでレチノイン酸シグナルを誘導し、ターミナルエフェクターへの分化を促進させること、それにはエピジェネティックな包括的な遺伝子発現制御が大きく関与していることを明らかにしてきた。平成30年度では、レチノイン酸シグナルによってクロマチン状態がオープンになることで発現が上昇する遺伝子X(未発表のため仮名)を同定した。LM-OVA感染症モデルを用いてCD8+T細胞における遺伝子Xの発現量を解析したところ、遺伝子XはエフェクターメモリーやSLECと呼ばれるエフェクターT細胞に高発現する一方で、ナイーブやセントラルメモリーT細胞では低発現であることが明らかとなり、この結果はヒトのT細胞でも共通していた。さらに遺伝子XをT細胞に強制発現すると、CD62L発現・増殖能・生存能が低下しターミナルエフェクター様の機能を示した。そこで遺伝子XがターミナルエフェクターのCD62L発現・増殖能・生存能を回復させる標的になりうるか発現抑制系を用いて検討した。期待した通りに、in vitroで誘導したヒト・ターミナルエフェクターT細胞の遺伝子X発現を抑制することで、CD62L発現と生存能が回復した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ターミナルエフェクターT細胞分化を決定づけ、その機能を回復させるための標的となる遺伝子Xを同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
<T細胞における遺伝子Xの生理的機能の解明> 遺伝子Xは、増殖能や生存能が低いエフェクターメモリーやターミナルエフェクターで高発現することから、T細胞分化の決定的な制御遺伝子である可能性が高い。これを証明するために遺伝子XをT細胞で特異的に欠損するコンディショナルノックアウトマウを作製しLM-OVA感染症モデルを行う。また、薬剤誘導性に遺伝子Xを欠損するマウスを用いて、ターミナルエフェクターT細胞における遺伝子Xの役割を明らかにする。
<遺伝子Xを標的とした癌免疫療法の開発> ヒト由来ターミナルエフェクターT細胞における遺伝子X発現を抑制することで、CD62L発現・生存能が回復することを見出した。しかしながら、その効果は十分ではなかった。本年度では、強力に遺伝子Xの働きを抑制するshRNA配列・dominant negative mutant・低分子化合物などの探索を行う。この結果をもとに遺伝子Xを標的とすることで担癌免疫不全マウスに対するヒト癌抗原特異的T細胞輸注療法の効果を増強できるか検討する。
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Research Products
(7 results)