2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07226
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
大場 基 昭和大学, 腫瘍分子生物学研究所, 講師 (70297018)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子標的治療 / 肺がん / PKC / アポトーシス / 細胞内輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺がんは我が国の癌死亡率の第1位を占め、罹患率も極めて高く、治療法の確立は喫緊の課題である。本研究課題では、非小細胞肺がん(NSCLC)細胞にアポトーシスを誘導し、浸潤・転移を抑制する分子 Protein kinase C eta (PKCeta)を標的とした、新規肺がん分子標的治療法の開発を目指す。具体的には、1) PKCetaに対する新規低分子阻害剤の探索、2)高効率で効果的にPKCetaの発現・活性を抑制する核酸医薬品・ペプチド医薬品の探索、3)PKCetaノックダウンによって生じる、細胞増殖・運動阻害の分子メカニズムの解明とPKCetaの下流シグナル因子の同定である。 平成29年度は、PKCetaの機能や発現を阻害しうる新規薬剤の探索として、低分子化合物の網羅的探索を行った。更に上記2)、3)の項目に関して検討を行った。PKCetaを標的とした種々のsiRNA等をコラーゲンベースの核酸導入試薬を用いて、免疫不全マウスによる皮下腫瘍担癌モデルに全身投与し、その効果を検討した。その結果、NSCLC細胞PC-9の増殖が有意に抑制され、その抗腫瘍効果が確認された。 また、PKCetaの発現抑制によるアポトーシス誘導や細胞運動の阻害は、EGFR等の増殖因子レセプターやE-Cadherin等の細胞接着因子の細胞内輸送、特に細胞膜上へのリサイクリングが阻害されているためである。この原因として、膜トラフィック制御因子Rab11とそのエフェクター分子Rab11FIP1の蛋白修飾にPKCetaが関与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
siRNAやその修飾体の全身投与によって、皮下腫瘍モデルマウスにおけるPKCetaの発現が抑制され、腫瘍増殖が抑制されることが確認された。PKCeta 核酸医薬品が非小細胞肺がんの治療に有効であることを示す結果であり、将来的に実臨床に応用できる可能性を示唆するものである。 また、増殖・細胞運動阻害のメカニズムの解明が進んだことで、PKCetaの下流シグナル分子を治療標的として利用できる可能性も広がった。今後は、これらの下流因子を阻害する化合物・核酸医薬品に関しても同様の検討を行い、臨床応用への一助としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は核酸医薬品として、生体内で安定且つ発現抑制効果の高い架橋型核酸製剤等を用いて、より有効性の高いPKCeta 阻害剤の開発を目指す。その際には、皮下腫瘍マウスだけではなく、同所性肺腫瘍モデル等も用いて、より生体に近い環境下での検討も行いたい。またPKCeta偽基質ペプチドやその修飾体を用いたペプチド製剤の適用も行う。 また、分子メカニズムの解明は、Rab11の活性調整に関わる蛋白質修飾の詳細を質量分析等を用いて検討すると共に、PKCetaの相互作用因子の同定を行う。
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Causes of Carryover |
29年度において、PKCetaの相互作用因子の同定のために、外部依託として質量分析を用いた解析を行う予定であったが、そのサンプル作成の工程で予想を超えた時間が発生したため、年度内での予算消化が困難であった。準備が完了次第、質量分析の依頼を行い、研究費を使用・執行する予定である。
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Research Products
(7 results)