2017 Fiscal Year Research-status Report
進化分子工学的手法によるsiRNA導入に特化された細胞膜透過ペプチドの選別
Project/Area Number |
17K07232
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
多田 誠一 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (30598165)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞膜透過ペプチド / cDNAディスプレイ / in vitro セレクション / siRNA / 細胞内導入 / 進化分子工学 / 遺伝子発現抑制 / shRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は細胞膜透過ペプチド(CPP)の選別に必要な、cDNAディスプレイ複合体の作製条件および選別実験の過程で生じる懸念事項の確認を実施し、細胞を用いたCPP選別のモデル実験が可能な段階まで計画を進捗させた。本研究ではCPPの選別時に遺伝子発現抑制効果を有するshRNAを連結させたmRNA(sh-mRNA)を使用するため、まずこのRNA鎖を細胞内に導入した際に遺伝子発現抑制効果が得られるか評価した。ルシフェラーゼ発現細胞株を用いてsh-mRNAの導入によるルシフェラーゼ発現の低下を確認した後、次にこのsh-mRNAによるcDNAディスプレイ複合体の作製が可能かどうか評価を行った。その結果、複合体作製の一連の工程である1)ピューロマイシン結合DNAリンカーとの結合形成、2)ペプチド鎖の翻訳とピューロマイシンを介したsh-mRNAとの連結、3)mRNA部分の逆転写によるcDNAの生成の3点を確認し、複合体作成が可能であることが示された。特に2)においては、使用する無細胞翻訳系の由来が原核細胞の場合と哺乳細胞の場合でペプチドの連結効率に大きな差があることが確認された。また3)においても、ペプチド連結後の複合体を精製せずとも逆転写反応が進むことが確認されたため、ペプチド選別作業の短縮・効率化が期待される。これらの結果より、ペプチド選別作業に必要な項目をひととおり確認できたといえる。さらに、現時点ですでに、以降の培養細胞株を用いた実験に必要となる複合体の精製・濃縮法の改良にも着手しており、ビオチンの可逆的な結合・解離が可能なアビジン類縁体を用いることで効率的に複合体を精製できることを確認している。以上を受けて、今後は培養細胞株を用いたCPP選別のモデル実験構築に必要な項目の検討に移る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点では細胞膜透過ペプチド(CPP)の選別実験系のモデルを構築するための条件検討を行い、ペプチド選別に必要な諸項目の検討が終了した段階にある。当初は初年度の時点で培養細胞株を用いた選別実験のモデル系構築を終えている計画案を提示していた。しかし、ペプチド選別系のモデル構築における諸過程のうち、翻訳ペプチドがピューロマイシンを介してDNAリンカーとの結合を形成する過程や、得られた複合体を効率よく精製・濃縮する手法の構築などにおいて困難が生じる可能性が当初から予想されており、場合によっては大幅な進捗の遅れがある可能性も当初から想定されていた。その点で、実際には複数種の無細胞翻訳系の検討やアビジン類縁体固定化磁気ビーズを用いた精製法の検討が奏功し、難所を比較的短期間で解決することができたと言える。現在はすでに培養細胞株を用いたモデル選別系の検討に着手できる体制にあり、本研究の遅れは想定内の範囲で、おおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点ですでに、shRNAを連結した状態でのcDNAディスプレイ法に基づいたペプチド選別の目処が立っているため、30年度はまず、培養細胞株を用いた細胞膜透過ペプチド(CPP)の選別が可能かどうかを確認するモデル実験系の構築に向けた検討を行う。既知のCPP配列を有するcDNAディスプレイ複合体を作製し、培養細胞への複合体全体の取り込みの有無、および細胞可溶化後の逆転写PCRによるペプチドライブラリー鋳型DNAの回収の可否を確認する。さらにshRNAを含んだcDNAディスプレイ複合体を市販のトランスフェクション試薬によって細胞内に導入した場合、想定通りshRNA部分による遺伝子発現抑制効果が得られるかについても評価を行う。これと同時に蛍光タンパク質発現細胞株を作製し、shRNAの細胞内導入後に蛍光タンパク質発現量に基づいたセルソーターでの選別が可能になるように準備を進める。蛍光タンパク質発現細胞株の作製に長時間かかる見通しの場合、代替法として蛍光タンパク質をコードしたmRNAをcDNAディスプレイ複合体と同時に細胞内導入することで、shRNAによる発現抑制効果の確認が可能かどうか評価を行う。上記の検討を進め、既知のCPPとランダム配列のペプチド鎖のそれぞれを有するcDNAディスプレイ複合体を作製して両者を混合し、モデル実験を実施して既知CPP配列の濃縮具合を確認することで選別系の機能を評価する予定である。CPP選別系が有効に機能することが確認でき次第、実際にランダム配列のペプチドライブラリーからshRNAが有効に機能するCPP配列の選別を行い、複数の候補配列を特定して各々の細胞内導入能の評価を実施する。30年度中にモデル実験系の構築を終了し、実際のペプチド選別を実施できるよう研究を進展させていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究進捗の部分的な遅れによって、一部検討内容が本年度中に実施されなかったため次年度使用額が生じた。すでに当該検討内容に着手できる段階まで研究が進んでおり、次年度使用額を当初の予定通り使用して検討を実施する予定である。
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