2017 Fiscal Year Research-status Report
初期胚の核構造変化と細胞分化におけるゲノム動態のイメージング解析
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17K07241
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂本 尚昭 広島大学, 理学研究科, 准教授 (00332338)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ウニ / 初期型ヒストン遺伝子 / 核構造 / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、複数の初期型ヒストン遺伝子座が発現の活発な桑実胚期に集積することを見出していた。そこで、その分子機構を解明することを目的とし、初期型ヒストン遺伝子座の転写活性化に必要なMBF-1の作用を阻害するために、MBF-1結合配列の二本鎖オリゴヌクレオチドをウニ胚に導入した。その結果、桑実胚期における初期型ヒストン遺伝子の発現が減少するとともに、遺伝子座の集積する頻度も減少した。したがって、初期型ヒストン遺伝子座の集積にはMBF-1による転写活性化が関与する可能性が示唆された。また、アルファアマニチンによる転写阻害においても、ヒストンmRNA量の減少及び集積頻度の減少が観察された。したがって、桑実胚期における初期型ヒストン遺伝子座の集積には、この遺伝子の転写活性化状態が関与することが示唆された。 次に、この遺伝子座の動態をライブイメージングにより解析するために、ゲノム編集ツールのCRISPR-Cas9系を用いたシステムの確立を試みた。ヌクレアーゼ活性を失ったdead Cas9 (dCas9)を作成して蛍光タンパク質遺伝子mNeonGreenと融合させ、このdCas9-mNeonGreen mRNAと初期型ヒストンやテロメアを標的とするsgRNAをウニ胚に共注入した。その結果、核内においてdCas9-mNeonGreenの発現(蛍光)が観察されたものの、遺伝子座を示す特異的なスポットは検出されなかった。これについては、さらなるチューニングが必要である。 また、核構造を可視化するためにLamin(核ラミナ)、Nup(核膜孔複合体)、HP1(ヘテロクロマチン)、CenpN(セントロメア)、フィブリラリン(核小体)等のcDNAをクローニングし、mCheeryとの融合遺伝子の発現ベクターを作製した。塩基配列を確認後、mRNAをウニ胚に導入して核構造の変化についても解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期型ヒストン遺伝子座の動態と転写活性化状態との関連を示すことができた点は、順調な進展である。ここまでの成果をまとめ、Journal of Cell Science誌で公表した。 ライブイメージング系の確立では、ツールの作製まではできたが、解析の最適条件を見出すには至っていない。しかし、これは当初の予定通りであり、平成30年度以降に最適条件を決定していく予定である。 核構造を可視化するツールについても順調にそろっており、平成30年度にその動態を解析する予定であるが、これも当初の計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
初期型遺伝子座のライブイメージング系では、dCas9-mNeonGreenによる実験系のチューニングを行うが、ウニを用いたこの実験系ではバックグランドも高いことが判明したため、チューニングが難しことも予想される。そこで、初期型ヒストン遺伝子座が集積したものがHistone Locus Body (HLB)であると仮定し、一般的にHLBの構成成分であるとされるFLASHやNPAT、U7 snRNPを標的としたライブイメージングも試みたいと考えている。これが成功すれば、我々が観察している初期型ヒストン遺伝子の集積体がHLBであることが証明できると同時に、その動態も明らかにできると考える。 また、初期型ヒストン遺伝子以外の遺伝子座、例えば反口側外胚葉特異的に発現するアリルスルファターゼ遺伝子や一次間充織細胞特異的に発現するHpEts・HpTb遺伝子を可視化する実験系も確立したいと考える。 核構造の可視化については、各ツールのmRNAをウニ胚に導入し、順次その発現部位と動態を解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
少額であり、必要な消耗品を購入するには十分でなかったため、次年度に使用することとした。 翌年度分と合わせて、研究の進行に必要な酵素購入のために使用したいと思う。
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Remarks |
広島大学プレスリリース「ウニの発生における遺伝子の核内局在と発現の関連性を解明」 https://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/90844/【研究成果】ウニの発生における遺伝子の核内局在と発現の関連性を解明.pdf
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