2018 Fiscal Year Research-status Report
Genomic analysis of the YY supermale frog and identification of the mele-determining gene
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17K07242
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高瀬 稔 広島大学, 両生類研究センター, 准教授 (80226779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | YY超雄 / ゲノム解析 / 性決定様式 / 両生類 / ネッタイツメガエル |
Outline of Annual Research Achievements |
ネッタイツメガエルのYY超雄とXX雌から調整したゲノムDNAについて次世代シークエンサーHiSeq2500による150 bpのペアエンド解析を行い、それぞれ101.8Gおよび92.5Gのシークエンスデータを得た。CLC Genomics Workbenchシステムによって解析した結果、雌雄間で異なる塩基配列(DeletionおよびMNV、SMV、Insertion、Replacement)は、第1染色体(Chr1)から第10染色体(Chr10)それぞれの染色体において、115,283~439,608箇所で確認された。各染色体の塩基数当たりの変異箇所の割合は0.19~0.44%となり、全体的な相同性としてChr6やChr8では比較的高く、Chr5やChr9では比較的低い傾向が見られた。また、各染色体における変異箇所のばらつきを見ると、Chr10以外の染色体については、両端側に変異箇所が多い傾向が見られた。YY超雄-XX雌間の塩基配列の違いが多くの箇所で確認されたことから、今後さらに詳細なバイオインフォマティクス解析を進めると共に、RNA-seq解析等により雄決定候補遺伝子を絞っていく必要がある。 さらに、雄決定候補遺伝子のノックアウトやトランスジェネシスを行うためのリソース作製および雌性決定様式の確認も行った。交配を繰り返すため、作製に数年を要するYY超雄を一回の交配で得るためにYY雌の作製に着手した。XY雄とXY雌の人工交配によって得られたYY超雄を含む幼生集団にエストロゲン処理を行った。現在、成熟させるために飼育を継続中である。また、幼生期にアンドロゲン処理を行った雄個体を用いて人工交配を行ったところ、100%雌の幼生集団が得られたことから、雌の性決定様式がXXであることが再確認された。今回得られたXX雄を用いた人工交配により、今後も全雌集団を作製することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は、「①次世代シークエンサーによる雄特異的ゲノム解析」「②FISHおよびPCRによる雄特異的ゲノムおよびY性染色体の同定」「③精巣分化過程のRNA-seq解析」「④雄特異的ゲノム領域のノックアウトおよびトランスジェネシス」の4項目について予定していた。 ①についてはCLC Genomics Workbenchシステムによって解析を行った。しかし、雌雄間で塩基配列に違いが見られる箇所が予想以上に多く、染色体上に散在していたため、雄決定候補遺伝子を絞るには至っていない。今後さらに、詳細なバイオインフォマティクス解析を行う必要がある。②については、CLC Genomics Workbenchシステムにより、パソコン上で染色体へのマッピングが可能であるため、FISHを行う必要は無くなった。③については、全雄幼生集団を作製するために必要なYY超雄が枯渇したため、再度YY超雄の作製を行うと共に、より短期間にYY超雄を得るためにYY雌の作製にも着手した。現在、成熟したXX雄とYY超雄の混在集団の中から、人工交配によってYY超雄の選別を行っている。④については、今後選別されるYY超雄の人工媒精によって得られる全雄集団の受精卵を用いて、ノックアウト実験を行うことになる。一方、全雌幼生集団の作製に必要なXX雄は得られているので、トランスジェネシス実験は可能である。その前に、さらに詳細なバイオインフォマティクス解析や精巣分化過程のRNA-seq解析等による雄決定候補遺伝子の選定が必要である。 以上により、進行具合は「遅れている」という評価である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、CLC Genomics Workbenchシステムを用いて、得られたゲノムシークエンスの雌雄間の違いについてより詳細に解析する必要がある。同時に、XY雄とYY超雄が混在した集団の中から、人工交配によりYY超雄の選別を行い、得られたYY超雄とXX雌を交配して全雄幼生集団を作製する。一方、XX雄とXX雌を交配して全雌幼生集団を作製する。そして、これまでに行った精巣または卵巣の分化過程における組織学的解析結果をもとに、精巣分化および卵巣分化が起こるステージ前後の遺伝子発現変化についてRNA-seq解析を行う。精巣分化特異的に発現している遺伝子に着目し、その塩基配列を先のゲノムDNA解析結果と照合して、精巣分化に関係することが予想される雄特異的ゲノム領域(雄決定候補遺伝子)を選定する。選定した領域について雄ゲノム特異的であることや精巣分化特異的な遺伝子発現が見られることなどをPCR法およびin situハイブリダイゼーション法により解析する。 次に、選定された雄特異的ゲノム領域が雄決定に関係していることをノックアウト法およびトランスジェネシス法によって確かめる。ノックアウト法では、YY超雄とXX雌の交配によって得られる全雄集団の受精卵に、雄決定候補遺伝子に変異が入るように設計したベクターをインジェクションし、胚を発生させて精巣分化の阻害または卵巣分化が見られることを組織学的および分子生物学的に解析して確かめる。また、トランスジェネシス法では、XX雄とXX雌の交配によって得られる全雌集団の受精卵に、雄決定候補遺伝子を組み込んだベクターをインジェクションし、胚を発生させて精巣が分化することを組織学的および分子生物学的に解析して確かめる。トランスジェネシス法およびノックアウト法によって得られた幼生の一部は、成熟させるために飼育を継続する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、今年度に予定していたRNA-seq解析等を次年度に行うことになったためである。 助成金は、RNA-seq解析およびPCR解析、in situハイブリダイゼーション解析、トランスジェネシス解析、ノックアウト解析のための受託やキット、薬品、器具、消耗品の購入、研究成果発表のための旅費等に使用を予定している。
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