2019 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集技術を利用した神経分化関連転写因子MIBP1の機能解析
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17K07245
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
田平 知子 金城学院大学, 薬学部, 准教授 (50155230)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 転写因子 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
MIBP1(HIVEP2)遺伝子はDNA結合ドメインとしてZincフィンガーを持つ巨大転写因子をコードしている。MIBP1タンパク質がNF-κB応答配列に類似した配列に結合するということを我々および複数グループが報告しているが、全く異なるTCに富む配列に結合するという報告もあり、実際にどのような遺伝子の発現制御を行っているのか不明な点も多い。そこでゲノム編集によりMIBP1タンパク質のC末端にFLAGタグを挿入し、タグ配列に対する抗体を用いてMIBP1の転写因子としての機能を解析している。 本年度はゲノム編集によりMIBP1遺伝子の片側のアレルに FLAGタグ配列を挿入したHCT116-M15細胞の解析を行った。 この細胞は全長約270 kDのMIBP1-FLAG融合タンパク質を発現しており、そのタンパク質は核と細胞質の両方の画分に検出された。MIBP1のmRNA発現はTNF-α処理により上昇するが、ゲノム編集されたMIBP1-FLAG mRNA発現も同処理により上昇したことから、一連のゲノム編集操作後もこの細胞でMIBP1遺伝子発現調節機構が維持されていると考えられた。TNF-α処理によりMIBP1タンパク質の発現も上昇した。また、抗FLAG抗体をもちいて融合タンパク質を免疫沈降すると、O結合型β-N-アセチルグルコサミン転移酵素 (OGT)が共沈し、これまでラットMIBP1 cDNA過剰発現の系で見出したOGTとの相互作用が確認できた。さらに、この細胞の核抽出液を用いたゲルシフト法によりMIBP1タンパク質の結合するDNA配列の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MIBP1タンパク質が転写因子として働く標的配列をクロマチン免疫沈降(ChIP)シーケンスのような手法で明らかにするためには、同タンパク質が核内である程度の濃度を持つことが必要である。ゲノム編集を行って得られた細胞においてMIBP1タンパク質の発現レベルが低いことと、核内に移行しているMIBP1タンパク質の割合が半分以下であったことから、このまま予定していたChIPシーケンスを行うのは困難と判断した。よりMIBP1タンパク質の発現が高い条件を探索し、より高感度な系を検討するのに時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム編集により転写因子MIBP1の末端にFLAGエピトープタグがノックインされた細胞を用いてMIBP1タンパク質が結合するDNA配列の探索を行う。当初はFLAG抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)を行い、次に超並列型シーケンサーを用いてChIPにより回収されたDNAの配列解析を行うChIPシーケンスを計画していたが、より微量なタンパク質についてDNAとの相互作用を検討することが可能なCUT&RUNシステムの採用も検討する。これによりMIBP1タンパク質が結合する遺伝子群を同定し、同タンパク質が関与すると考えられる神経分化などにおける動態を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度にクロマチン沈降実験およびそれにより得られたDNAのシーケンスを行う予定であったが、実験計画がやや遅れているため、それらの実験を遂行できなかった。次年度はクロマチン沈降実験の条件を見直し、シーケンス解析まで進める予定である。
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Research Products
(2 results)