2017 Fiscal Year Research-status Report
Complihensive analysis for causative genes in unknown monogenic diabetes
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17K07258
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
岩崎 直子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70203370)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゲノム医療 / 個別化医療 / 若年発症糖尿病 / 次世代シーケンサー / MODY / 原因遺伝子 / 単一遺伝子疾患 / 網羅的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】monogenic diabetesは肥満を伴わず、膵自己抗体陰性で環境要因に関係なく30歳未満で発症する糖尿病である。その中では常染色体優性遺伝若年発症糖尿病:MODY(maturity onset diabetes of the young)が大部分を占める。MODYの頻度は、英国では30歳未満で糖尿病と診断された全患者の4%であった(Shields, 2017)が、一般には糖尿病全体の1-2%と報告されている。従って、わが国では11万人程度と推定されているが、多くの場合は1型糖尿病や2型糖尿病として治療されている。欧州ではMODYの80%で原因遺伝子が同定されており、個別化医療のガイドラインが公表された。一方、わが国では原因遺伝子が明らかにされたMODYは約20%に過ぎず、個別化医療のシステムも整備されていない。 【目的】1種類の原因遺伝子によって発症する糖尿病(monogenic diabetes)の原因遺伝子を網羅的に明らかにし、個別化医療の推進に寄与すること。 【実施概要】<第1ステップ>充分にvalidationされたサンプル100例程度を選択し、13種類のMODY遺伝子をターゲットシーケンスにより解析する。シークエンサーは設置済み。カスタムプラーマ―もオーダー済みであり、第1ステップは1年以内に完了予定である。学内の支援システム(TIIMS)を利用してPoly Phen, SIFT, CADDに代表されるアルゴリズムにより変異の機能障害レベルを推定する。判定不能の場合やpromoter領域の変異/多型は、INS-1細胞を用いた細胞レベルでの機能解析を行う。<第2ステップ>上記で変異が同定できなかった症例についてwhole exome sequenceを行う。家系内の複数のaffected memberのDNAを収集できている家系を優先する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、MODY14遺伝子に絞ってカスタムプライマーを作成し、Miseqを用いてターゲットシーケンスを行った。予算の関係から最終的にサンプル数は48検体とした。スクリーニングに用いた遺伝子のリストはHNF4A, GCK, HNF1A, PDX1, HNF1B, NEUROD1, KLF11, CEL, PAX4, INS, BLK11, ABCC8, KCNJ11, RFX6である。現時点でシーケンシングは順調に完了できており、得られた全アウトプットデータのうち、翻訳領域に存在する塩基置換は874種類であった(ナンセンス変異2種類、ミスセンス変異386種類、サイレント置換486種類)。絞り込み作業の第1段階として、1000人ゲノムデータ、PolyPhen、SIFT、CADD、ClinVer、gnomADなどのデータベースおよびアルゴリズムを用いてスクリ―ニングを行った。その結果、病因と考えられる変異はHNF1B, NEUROD1, KLF11, BLK11の4遺伝子を除いた残る10遺伝子内の26種類に絞られた。2種類はナンセンス変異であることから明らかに原因遺伝子と考えられた(1種類は新規変異)。26種類のミスセンス置換のうち、4種類は以上の検討から病的変異と断定できた。以上から、48名の発端者のうち8名(16.7%)において病因と考えられる変異を同定できている。24種類のミスセンス変異に関しては家系内での伝達についてサンガーで確認を行う必要がある。興味深い点として、現時点で7名の発端者においては2種類から最大4種類の病的変異の可能性が否定できないミスセンス変異が異なるMODY遺伝子に見出されている。このような結果は、従来のサンガー法による1種類の遺伝子毎の検討では見つかり難かったと思われる。真の原因遺伝子がどれであるかを、今後明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサーで得られた病的変異の可能性のある26種類の全ての多型についてサンガーシーケンスで確認を行う。さらに、24種類のミスセンス変異については、家族サンプルのあるものについては家系内での伝達をサンガーで確認する。この過程で複数の病的変異が見つかった発端者の家系で変異がどのように伝達しているかを明らか異にする事ができる。これにより、信の病院となっている遺伝子を特定する事ができると期待される。プライマーの設計および発注は既に完了したので、今後タイピングを進めて行く予定である。順調に進めば、5月中には検討が完了できる予定である。 協力して頂いた発端者で遺伝カウンセリング時に開示を希望され、かつ変異が同定できた患者については、今後順次、解析結果を開示して行く予定である。開示は臨床遺伝専門医・指導医資格を有する申請者が、兼任先である東京女子医大付属遺伝子医療センターで行う予定である。さらに、若年発症である事、糖尿病という慢性疾患である事、遺伝疾患である事などからMODYの遺伝カウンセリングの在り方も重要な検討事項である。遺伝カウンセリングの実施により遺伝子解析研究にご協力頂いた方々にアンケート調査を実施し、MODYの遺伝カウンセリングの現状と課題について、今後明らかにしていく研究を計画中である(他大学との共同研究体制)。 今後の予定としては、これらの成果を2018年10月開催の米国人類遺伝学会、同月開催される日本人類遺伝学会の抄録とする予定である。また、平成31年5月の日本糖尿病学会でも発表を予定している。論文化については年内を目途に英文誌へ投稿する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究実施において予想以上のコストが必要であった。すなわち、48検体のHaloplex代としてプライマーデザインを含めて109万円、MiseqReagent Kit v3(600cycle)に約27万円、ならびに解析実験に必要な様々な消耗品類のコストが約45万円、で合計約180万になった。従って、当初の予算を前倒しとして研究を進めた。結果的には、Miseqによる解析は順調に完了できた。現在、取り組んでいる作業は、得られたアウトプットデータのアノテーション作業、ならびに、サンガーシーケンスを用いた確認である。 現時点において、研究の進捗状況としては、新規変異を含め、先に述べたように解析したうちの17%のMODY症例において原因と考えられる遺伝子を同定できた。同一家系内に病因と考えられる変異を二種類持ち併せた家系もあって、新たな科学的事実を発表できると考えている。次年度以降は残りの予算を使用して、得られた範囲の成果を論文化する予定である。しかし、明らかに予算が不足していることから何らかの方法で新たに追加の研究費を得る必要がある。
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