2018 Fiscal Year Research-status Report
生息域外保全による遺伝的劣化を防止する指針提示-野生絶滅種コシガヤホシクサを例に
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17K07275
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
田中 法生 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10311143)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 野生絶滅種 / 生息域外保全 / コシガヤホシクサ / 遺伝的劣化 / 近交弱勢 |
Outline of Annual Research Achievements |
野生絶滅種であるコシガヤホシクサの生息域外保全における適正な保全管理を検討するために、交配様式の違いがその後代の生育、繁殖、および遺伝的特性を明らかにするために研究を行った。 2018年度は、1)自家および他家交配の系統をさらに継代し、F3世代を育成し、湿地および水中での発芽・成長試験を行った。各試験区ごとにF4世代の採種を目指した。湿地および水中育成における生存個体群からの後代の採種を行った。2)我々の先行研究において断片的に検出された他家交配の影響について、階層ベイズモデルを用いた詳細な解析を行うことで、母性効果による他家交配の影響の変化を明らかにした。 1)については、栽培状況が当初の想定よりも悪化したために、成長試験に関するデータは予備的なものとして扱うこととした。そのため、2019年度にF3世代とF4世代の一部の成長試験を平行して行う。 2)については、2016年に採取した、葉枚数と最大葉長(5-7月)・花序数(8-9月)の計測値(欠損のない15母株)を解析した。その結果、全時期の全ての形質において、他家交配の影響は負と中立の影響が過半数を占め、正の影響は過半数以下だった(葉枚数:0.33%, 0.4% , 0.33%; 最大葉長0.3%, 0.4%, 0.27% ; 花序数:0.33%, 0.33%)。また、最大葉長と花序数に関しては、時間の経過とともに負の影響の割合が増加していた。母性効果由来の他家交配の影響が断片的であったことは、正の影響を持つ母株が保全集団中では低頻度であり、遺伝的多様性の消失が現在進行中である可能性を示唆している。また、負の影響が時間とともに累積的に増加する事は本種が常習的な自殖種である証拠でもある。そのため、保全管理において、集団の遺伝的多様性の低下・均一化の回避には遺伝的多様性を持つ家系単位での保全が望ましいと改めて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度の実験用栽培個体の播種時期が遅くなった上、栽培状況が悪化したため、信頼できる成長データが得られず、2018年度のデータは予備的データとして扱わざるを得なくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
栽培状況が当初の想定よりも悪化したために、成長試験に関するデータは予備的なものとして扱うこととした。そのため、2019年度にF3世代とF4世代の一部の成長試験を平行して行うことで、当初予定に戻す予定である。
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Research Products
(6 results)