2019 Fiscal Year Research-status Report
生息域外保全による遺伝的劣化を防止する指針提示-野生絶滅種コシガヤホシクサを例に
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17K07275
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
田中 法生 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10311143)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 野生絶滅種 / 生息域外保全 / コシガヤホシクサ / 遺伝的劣化 / 近交弱勢 |
Outline of Annual Research Achievements |
野生絶滅種コシガヤホシクサの生息域外保全における適正な保全管理を検討するために、交配様式の違いがその後代の生育、繁殖、および遺伝的特性を明らかにするために研究を行った。2019年度は、1)交配様式とその世代繰り返しによる後代の適応度に対する影響の継続実験作業、2)MIG-seq法を用いた保存個体群の遺伝的多様性の評価、3)野生復帰地における保存個体群の生存可能性と適正管理の検討を行った。 1)については、継続的に交配試験を行っている28系統について、自家交配および他家交配のF4世代の播種および栽培実験を行い、発芽・成長・繁殖の各項目を記録した。各系統について、2020年度の総合評価に用いるF5の交配・採種を行った。 2)については、コシガヤホシクサが1集団のみであることから、同属のホシクサ2集団、イトイヌノヒゲ3集団、クロホシクサ1集団、イズノシマホシクサ6集団との比較から評価することとした。MIG-seq法を用いてSNPを検出し、遺伝的多様性の諸指標を算出した。コシガヤホシクサの保存個体群の平均ヘテロ接合度(期待値)Heは0.201、近交係数Fisは0.087で、18年度、19年度栽培にほとんど差異は無かった。本属の分子系統解析から近縁性が示されたイトイヌノヒゲ(He=0.176、Fis=0.268)、イズノシマホシクサ(0.152、0.061)、属内では別系統に位置するホシクサ(0.220、0.038)、クロホシクサ(0.224、-0.033)は、同等または少し低い数値を示した。さらに多面的な評価が必要であるが、ヘテロ接合度からは、コシガヤホシクサはホシクサ属種として一般的な遺伝的多様性を持つことが示された。 3)については、一定以下の水深(111cm以下)、捕食者の防除および波浪の緩和を必要条件として、現在の保存個体群が発芽・成長・開花・結実が可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交配様式による後代の適応度への影響調査については、やや遅れているが、2020年度に最終的なデータを取得できる予定である。一方で、本種の遺伝的多様性の評価を初めて実施でき、遺伝的多様性の劣化を踏まえた保全指針に重要な知見が蓄積されてきた。総じて、おおむね順調通りに進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
交配様式による後代の適応度への影響調査は、2019年度に得られたF5世代種子の生育実験によって最終的なデータを取得する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Effects of net sheltering, water depth, and soil management on the survival and reproduction of the wild extinct aquatic plant Eriocaulon heleocharioides in Sanuma Lake, Japan.2020
Author(s)
Tanaka, N., Horiuchi, Y., Nagata, S., Hasegawa, S. and Kamijo, T
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Journal Title
Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series B
Volume: 45
Pages: 1-10
Peer Reviewed
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[Journal Article] First molecular phylogenetic insights into the evolution of Eriocaulon (Eriocaulaceae, Poales)2019
Author(s)
Larridon, I., Tanaka, N., Liang, Y., Phillips, S. M., Barfod, A. S., Cho, S-H., Gale. S. W., Jobson, R. W., Kim, YD., Li, J., Muasya, A. M., Parnell, J. A. N., Prajaksood, A., Shutoh, S., Souladeth, P., Tagane, S., Tanaka, Nob., Yano, O., Mesterhazy, A., Newman, M. F. and Ito, Y.
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Journal Title
Journal of Plant Research
Volume: 132
Pages: 589-600
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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