2017 Fiscal Year Research-status Report
コンデンシンを介したDNA超らせん構造の制御機構とその生理作用の解明
Project/Area Number |
17K07281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須谷 尚史 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 講師 (30401524)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 染色体凝縮 / コンデンシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、染色体凝縮因子コンデンシンが染色体高次構造を制御するメカニズムを明らかにすることを目指している。今年度は、分裂酵母とヒト培養細胞を対象とした定量的なChIP-seq解析により、コンデンシンはChIP-seqプロファイルで強いピークとして見える”ホットスポット”に確かに高頻度で結合しているが、それだけでなく染色体上の他の領域にも非限局的に存在していることを明確にした。また核内のDNA-DNA相互作用を網羅的かつ高解像度に可視化する実験手法Hi-C法を導入し、ヒト培養細胞における核内高次構造の細胞周期における変化を描出することにも成功した。M期においては間期核を特徴付けるTADと呼ばれる構造が消失し、領域ごとの個性が消失した相互作用の様相を示すことが見出された。コンデンシン除去細胞を用いたHi-Cデータの取得も終えており、これらのデータと高解像度コンデンシン結合プロファイルを相互に比較解析することにより、コンデンシンがM期染色体構築において果たしている役割を今後明らかにして行けると期待している。一方で、コンデンシンはM期染色体凝縮以外の役割も果たしており、それは間期核におけるDNA損傷修復と関係すること、染色体上のホットスポット様の結合と関連があることがこれまでの研究から示唆されている。この機能の詳細を理解するため、分裂酵母を用いた遺伝学的アプローチによる解析を開始した。コンデンシン変異を相補するサプレッサー変異を体系的に取得し、その実体を全ゲノムシークシークエンスにより明らかにしようとしているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初優先して導入することを計画していた「インターカレーターを用いた染色体DNAの超らせん密度の計測」は、技術的困難によりまだ導入できていない。しかし、染色体の高次構造を探る別の手法であるHi-C法については導入に成功しており、かつ得られた解像度は世界の最先端レベルと遜色ないものとなっている。今後はHi-C法のデータを活用してコンデンシンの分子機能に迫る研究を進めることができるので、進捗状況は概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回取得できたHi-Cデータ及び定量的ChIP-seqデータを比較解析することで、コンデンシンが染色体高次構造を制御する機構についての研究を進めてゆく。Hi-C法と並行して、よりローカルなDNA構造を探る手法の導入も行う。引き続きインターカレータを用いる手法についての試行を行うとともに、micro-CやssDNA-seqなどの手法も検討する。また、遺伝学的手法によりコンデンシン機能の解明を目指すアプローチ(サプレッサー変異の単離・同定)も今年度に引き続き進めて行く。
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