2018 Fiscal Year Research-status Report
コンデンシンを介したDNA超らせん構造の制御機構とその生理作用の解明
Project/Area Number |
17K07281
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須谷 尚史 東京大学, 定量生命科学研究所, 講師 (30401524)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 染色体 / 染色体高次構造 / 染色体凝縮 / コンデンシン / Hi-C |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、染色体凝縮因子コンデンシンが染色体高次構造を制御するメカニズムを解明することを目指している。次世代シークエンサーを用いてゲノムワイドに構造情報を取得できるHi-C法やそのバリエーションを主たる手法として用いている。昨年度に引き続きヒト凝縮染色体のHi-C法による高次構造解析を行った。間期核で見られるTAD構造が消失し、代わりに~10 Mb の周期性を持つ構造が染色体全体にわたって現れることが見出された。しかし、同様のデータに基づいた詳細な解析が2018年中に他研究室により発表されてしまった(Science 359:eaao6135)。現在Hi-Cデータからさらなる独自の知見を引き出すことができないか検討中である。 近年コンデンシンの生化学的解析が国内国外の複数の研究室で急速に進展し、コンデンシンの分子機能に関する様々なモデルが提示されてきている。モデルの正当性を実際の染色体中で検証するためには、Mb よりも小さなスケールで染色体構造を捉えることが必要となってくる。Hi-C法の変法であるmicro-Cなどを適用し、染色体構造の可視化をより精緻なレベルで達成するための実験・解析を現在進めている。 コンデンシンと構造上よく似た複合体であるSmc5/6複合体は染色体上の固有の箇所に局在することが知られる。この結合部位を説明するモデルの作成を行ったところ、Smc5/6は転写によって生じた正の超らせん構造を認識しているという仮説が浮上してきた。この仮説は分子生物学的実験によっても支持された(スウェーデン、カロリンスカ研究所Camilla Bjorkegren博士との共同研究)。Smc5/6複合体が染色体の超らせん状態をモニターするプローブとして利用できる可能性を示すものであり、この知見を生かした研究にも取り組む予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コンデンシンの研究は現在世界中で急速に進展し始めており、その動向を見極めて研究方針を柔軟に修正していくことが必要な状況にある。これまでに染色体構造に関する情報を取得する実験手法であるHi-Cやmicro-C、ChIA-dropなどの技法を動かすことができるようになっており、時流を捉えた研究を行う態勢は整っていると言える。研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
生化学的研究からはコンデンシンが (i) ループの導入、(ii) スキャフォールドの形成、(iii) 超らせん状態の制御といった分子活性を示す可能性が提示されている。これらの可能性をin vivo で検証する実験に注力する。これまでに確立したHi-Cやmicro-C、ChIA-drop等の手法でデータを取得し、さらに情報学的解析を行うことでこの課題にアプローチする。 上述のように、出芽酵母Smc6の分子生物学的・情報学的解析から、Smc5/6複合体が染色体の超らせん状態をモニターするプローブとして利用できる可能性が浮かんできた。この路線の研究にも取り組む。
|