2019 Fiscal Year Research-status Report
HIV-1の遺伝子発現を保証するための転写とRNA核外輸送との連携
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17K07283
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 一郎 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (00467432)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RNA / RNA核外輸送 / HIV-1 / RNP |
Outline of Annual Research Achievements |
HIV-1の転写伸長因子Tatと核外輸送因子RevがウイルスRNAの共通の領域に結合すること、TatとRevは直接相互作用することを見出していた。これらの結果から、両者は協調的にウイルスRNAの共通領域に結合することにより、ウイルス遺伝子からの転写伸長とウイルスRNAの核外輸送を連携することを仮定していた。しかし、その後のモデルRNAを用いた試験管内反応系の実験から、両者は共通領域に相互排他的に結合すること、TatはモデルRNAのスプライシング反応を促進する一方、Revは抑制することを見出した。これらの試験管内の結果をもとにHIV-1の遺伝子発現に関して以下の修正した仮説を立てた。初期ではTatがスプライシング反応を促進する活性によってTat自身とRevの発現が誘導される。後期になるとRevがスプライシング反応を抑制することによって、イントロンを含むRNAから産生される構造タンパク質の発現が誘導される、という仮説である。Tatがスプライシング反応を促進することは既に報告されている。したがって本研究の焦点は、Revにスプライシング反応を抑制する新規活性があることを証明することである。 2019年度では、Revの新規活性について生細胞で検証した。まず、TatとRevが相互排他的に結合する領域を欠損したRNAを発現するプラスミドDNAを作製した。このプラスミドDNAをヒト培養細胞にトランスフェクションし、産生されるウイルスタンパク質を調べた。その結果、Revは上記結合領域依存的に、イントロンを含むRNAから産生されるタンパク質の発現を増強することを見出した。この結果は生細胞においてもRevがスプライシング反応を抑制するという仮説を支持している。ただしウイルスRNAを調べたところ、Revによるスプライシング反応の抑制を証明するまでには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TatとRevが協調的にウイルスRNA上で複合体を形成することにより、HIV-1遺伝子の転写伸長とRNA核外輸送を連携させるという、研究開始当初の仮説の修正を余儀なくされた。修正された仮説は、TatとRevはウイルスの感染時期に応じて相互排他的にウイルス遺伝子の発現パターンを調節するというものである。モデルRNAを用いた試験管内反応系により、Tatはスプライシング反応を促進する一方で、RevはTatとの共通結合領域依存的にウイルスRNAのスプライシング反応を抑制することが示唆された。また、ウイルスRNAおよびタンパク質を発現するヒト培養細胞においても、イントロンを含むRNAから産生されるタンパク質の発現が共通結合領域依存的にRevによって増強した。これらの結果は修正された仮説を支持するものである。ただしRNAレベルでは、Revが共通配列依存的にウイルスRNAのスプライシング反応を抑制することを証明するまでには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルスRNAの発現量の定量は、プラスミドDNAをトランスフェクションした細胞の全画分からRNAを抽出しRT-PCR法によって調べている。ただしこの方法では、RevによるウイルスRNAのスプライシング反応の抑制を証明するまでには至っていない。スプライシング反応は核内で起こり、RevはウイルスRNAの核外輸送を促進する活性を持っている。これら2点を考慮すると、全画分からRNAを抽出する方法では、スプライシング反応とRNA核外輸送の2つの現象を分離できていない可能性がある。この分離問題を解決するために、細胞を核と細胞質とに分画した後にRNAを抽出することにする。さらに、RT-PCR法では前駆体RNAとスプライシング産物を別々に解析するので、それぞれの増減は比較できてもスプライシング反応の効率を正確に定量することは困難である。そこで前駆体とスプライシング産物を同時に検出できるノザンブロッティング法の利用を検討している。以上の方法によって、RevがウイルスのRNAのスプライシング反応を抑制するという新規活性を証明することを目指す。
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Causes of Carryover |
Revのスプライシング反応の抑制という新規活性を生細胞で示すために、新しい解析法を検討している。核と細胞質とに分画した後にRNAを抽出し、ウイルスRNAをノザンブロッティング法によって検出する方法である。また、本研究課題に関与する新たな候補因子の同定に成功した。この候補因子の寄与を明らかにするために、遺伝子のクローニング、組換えタンパク質の発現精製、阻害抗体の作成を行う予定である。そして、組換えタンパク質や阻害抗体を用いた生化学的および分子生物学的解析を行う。これらの実験には時間を要するので期間延長を申請した。
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Research Products
(4 results)