2018 Fiscal Year Research-status Report
ファンコニ貧血タンパク質とアルデヒド代謝の新たな相互制御関係の解明
Project/Area Number |
17K07286
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
酒井 恒 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 助教 (70526251)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ファンコニ貧血 / 脂質代謝 / DNA損傷応答 / アルデヒド |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はファンコニ貧血の責任遺伝子産物(FAタンパク質)の1つであるFANCD2タンパク質と脂質代謝に関与する酵素の1つが直接相互作用することを見出した。当該年度においては、バキュロウイルス発現システムを用いて昆虫細胞内でこれら二つの因子の組換えタンパク質を発現・精製した。また、FANCD2においては様々な領域を欠失した変異型FANCD2を6タイプ(N末端欠失とC末端欠失をそれぞれ3タイプ)作出し、FANCD2タンパク質のどの領域が相互作用に重要であるかプルダウン解析を行い、その領域の詳細を特定しつつある。 生化学的手法における相互作用解析の一方で、前年度から継続している課題として、全く異なる機序によって制御されている(と現在は考えられている)DNA損傷応答と脂質代謝という二つの分子機構がどのような相互制御関係にあるのか、また細胞内において対象とする両因子がどこで働いているのかに関して機能的連関を示すに至っていなかった。しかし、当該年度において様々な条件検討を行った結果、脂質代謝に影響を及ぼす条件下に一定時間、細胞をさらすことによって、両因子の細胞内共局在を初めて誘導・検出することに成功した。このような脂質代謝制御に応答したFANCD2の誘導性の細胞内局在変化は、申請者の知る限り、FANCD2だけでなく他のFAタンパク質においても既報のいずれにもない全く新しい細胞応答であり、かつ両因子の相互制御に関わる分子機構を調べる上でも、きわめて大きな成果と言える。 また、当該年度においては本研究課題に関連する内容の総説を、国際学術誌であるGenes and Environment (Springer Nature)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生化学・分子生物学的手法による相互作用部位の特定に加え、生細胞における対象因子の細胞内共局在の誘導・検出に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度までに行われた解析によって、本研究課題の申請時に設定した仮説「脂質過酸化反応をはじめとする脂質代謝に関連する酵素とアルデヒドなどによって誘導されるDNA損傷応答に機能するFANCD2の間に機能的なクロストークが存在する」が実験的に証明されつつある。今後は、この新たな分子機構の生物学的意義および、その破綻がファンコニ貧血に見られるゲノム不安定性をはじめとする種々の病態発症機序にどのように関与しているのかを中心に解析を進める予定である。
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