2017 Fiscal Year Research-status Report
Energy coupling in Sarcoplasmic Reticulum Ca pump; mechanism of transmitting structural changes between catalytic and transport sites
Project/Area Number |
17K07297
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
大保 貴嗣 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (90207267)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カルシウムポンプ / リン酸化中間体 / 界面活性剤 / nanodisc / 静電的相互作用 / エネルギー共役 / 膜貫通ドメイン / ヘリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
Ca2+ポンプでは、細胞質領域でのATP加水分解に共役して膜貫通ドメイン(M1~M10)でCa2+が輸送される。その反応回路は、リン酸化中間体(EP)の形成、異性化と加水分解を経由する。EPの異性化では細胞質領域のドメイン配置が大きく変化し、構造変化が膜ドメインに伝わってCa2+が内腔へ放出される。脱リン酸化後、非リン酸化中間体(E2)の輸送部位へのCa2+結合によりCa2+ポンプが再活性化される。 ① 最近、M2の各アミノ酸残基間に5個のGly挿入(伸長とhelixの局所的破壊)変異を入れ、 M2は膜貫通部分(M2m)と細胞質部分(M2cyt)に機能的に区別され、各々が反応段階に応じて構造変化することが細胞質領域-膜貫通ドメイン間の構造変化伝達に重要であることを示した。またM2m-M2cyt連結領域の柔軟性が適切なCa2+-gatingとエネルギー共役に重要であることを示した。 次にこれら膜貫通部分の構造変化を調べる目的で、Ca2+ポンプを界面活性剤で可溶化してその影響を調べた。その結果、可溶化によりATPase活性やCa2+に対する親和性、E2へのCa2+結合速度が大きく低下した。Ca2+結合段階での膜ドメインの安定性や構造変化に脂質または他のタンパク質との相互作用が重要であることが示唆された。 ② 今回、Ca2+ポンプを任意の脂質組成のnanodiscに組み込む系を確立した。この系にて酸性リン脂質(PG、PS)と中性リン脂質(PC、PE)の混合比を変え、EP異性化速度に対する膜表面での静電相互作用の寄与を調べた。その結果、負の膜表面電荷の増大と共にEP異性化を抑制する静電的相互作用が増加した。またPSの場合は、膜表面電荷に加えてPS特異的な脂質ヘッドグループ-Ca2+ポンプ間の相互作用が影響することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画では、「CaポンプのA/M3-linker、M3、A/M2-linker、M1に種々の変異を導入して速度論的解析、EPへのCa閉塞能測定などを行い、共役に重要な新しい構造因子を検索して、その役割を明らかにする」ことであった。予備的実験で、すでにこれらの部位に変異導入して速度論的解析をおこない、共役に重要な新しい構造因子を検索する方向性が見えてきた。また、平成29年度以降の研究計画で、筆者が世界で初めて変異導入を用いてトラップすることに成功したE2PCa2状態について、「共同研究により、E2PCa2の結晶構造解析を開始する」に関して準備段階が進展している。すなわち、結晶化に適した界面活性剤の探索、およびそれを用いた可溶化のCaポンプへの影響を調べ、良い結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
「CaポンプのA/M3-linker、M3、A/M2-linker、M1に種々の変異を導入して速度論的解析、EPへのCa閉塞能測定などを行い、共役に重要な新しい構造因子を検索して、その役割を明らかにする」については予備実験の結果を踏まえて新しく異なる変異も調べ、これを展開していく。これらにより、着目した構造因子が細胞質ドメインの動きを反映して如何に膜ドメインへ構造変化を伝達しエネルギー共役させるかを解明する。 Caポンプの脱共役を引き起こすという報告のあるサルコリピンについては、COS-1細胞にCaポンプと共発現してミクロソーム画分を調べ、脱共役の有無を調べる。またサルコリピンが効果を与える反応段階について作用機構を明らかにする。上記界面活性剤で可溶化した系でサルコリピンとCaポンプの相互作用をHPLCで解析、脱共役の構造的基盤をFRETにより調べる。
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Causes of Carryover |
当該年度中にサルコリピン遺伝子の合成をメーカーに発注したが、合成困難性のため納品が大幅に遅れたため。また、合成したサルコリピン遺伝子をCOS-1細胞に強制発現してその発現の様子をウエスタンブロッティングで調べようとしていた。したがって、これに必要な抗サルコリピン抗体の選定と購入も遅れたため。次年度使用額は、サルコリピン遺伝子の合成料金、および抗サルコリピン抗体の選定と購入に充てる。
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Research Products
(11 results)