2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K07302
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 郁子 (小山郁子) 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10447948)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オートファゴソーム / ESCRTタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファゴソーム膜の閉鎖を評価する方法として、電子顕微鏡法を利用した3次元オートファゴソーム形態情報を取得する目的で、Serial block face-SEM と Array Tomography の方法を検討した。試料作成方法の面から、Array Tomographyで実験を進めることを判断した。平成30年度に所属研究室へ装置が導入されるので、多数のデータを安定して取得し解析を進める予定である。 生化学的な方法としては、GFP でオートファゴソームを標識した細胞破砕液から得た膜画分に proteinase K の酵素反応をさせ、残った GFP 陽性小胞の数を蛍光顕微鏡で計測する方法が有効であることがわかった。この方法を用い、細胞質側に湾曲した膜の分裂のための機械因子として知られる ESCRT タンパク質複合体のノックアウト細胞や RNA 干渉細胞では、オートファゴソームの閉鎖に障害があることを示唆する予備データを得た。 また、平成30年度の研究として計画していた ESCRT タンパク質のオートファゴソーム膜へのリクルートの直接観察についても試みた。GFP 融合 ESCRT タンパク質 CHMP4b-Venus と、オートファゴソームタンパク質 SECFP-LC3、LysoTracker Redの3色タイムラプス生細胞観察を行った。その結果、オートファゴソーム形成が完成する直前に、膜が最後に閉鎖する部位において ESCRT タンパク質が短時間リクルートされることを少数例検出するに至っている。数秒~数十秒といった短時間の現象を局所的に捉えようとしており、データ収集が非常に非効率な状況である。現在、RNA 干渉や優勢阻害などの方法を用い、ESCRT タンパク質がオートファゴソーム膜上に長時間停留する条件を探している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オートファゴソーム膜の閉鎖を評価する方法についての研究は順調に実施することができた。しかし電子顕微鏡法の検討は業者のデモ機を用いたため、多数のデータを取得することがかなわなかった。平成30年度には所属研究室に新規走査型電子顕微鏡と試料作成装置が設置されるので、安定してオートファゴソーム3次元画像データを取得できる予定である。オートファゴソーム膜の閉鎖を評価する生化学的な方法としては、GFP 標識した粗精製オートファゴソーム小胞を proteinase Kで消化するアッセイが有効であることがわかった。膜が閉鎖していればオートファゴソーム小胞内部の GFP が残存するが、閉鎖していないオートファゴソームの GFP は消化されてシグナルを失う。この方法は酵素の反応条件や基質となる細胞破砕液膜画分の量や調整方法に敏感に依存し、安定な結果が出にくいアッセイ系であり、さらなる安定な条件決定が必要である。また、たとえばオートファゴソーム完全に閉じておらず 20 nm 程度の小さい穴が開いている場合は、proteinase K が十分進入できない可能性がある。 オートファゴソーム膜閉鎖の評価に時間を費やしたため、平成29年度に計画されていたオートファゴソーム膜の内膜と外膜を区別する方法の確立については実施することができなかった。一方で、オートファゴソーム内膜と外膜の分離の制御因子の探索については、平成30年に予定されていた ESCRT タンパク質のノックアウト細胞や RNA 干渉による実験を実施することができた。さらに3色タイムラプス生細胞観察を試み、オートファゴソーム形成が完成する直前に、膜が最後に閉鎖する部位において ESCRT タンパク質が短時間リクルートされることを少数例検出するに至っている。これらのタンパク質がオートファゴソーム膜閉鎖に関与する可能性が高いことがわかりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書の通り、前年度に検討したオートファゴソームの開閉を検出する方法を用いて、解析を行う。平成29年度に計画されていたオートファゴソーム膜の内膜と外膜を区別する方法の確立については保留とし、本年度得た予備データをもとに、ESCRT タンパク質のオートファゴソーム膜閉鎖への関与についての解析を重点的に進めたい。 電子顕微鏡解析については、新しい電子顕微鏡と試料作製装置の納入とセットアップの時間を含む。生化学的アッセイについては、proteinase K を用いたアッセイだけでは不十分な可能性があるため、この方法の最適化を再検討することと平行して、別のアッセイ方法を試みる。ひとつは、酸性バッファーで開いたオートファゴソームの内部の GFP を消光させる方法について検討する。酸性バッファーの方法は GFP が酸性下で消光する性質を利用している。完全に閉じていないオートファゴソームの穴が数ナノメートルといった小さい場合でもバッファーが通過できるため、開閉の差の検出感度が上がる可能性がある。しかし、pH の大きな変化によってオートファゴソームの保持に大きな影響を与えてしまう可能性も心配している。 ESCRT タンパク質のオートファゴソームへのリクルートの直接観察は、ESCRT タンパク質の関与を示す強力なデータとなりうるが、現在は検出例が少ないことが問題となっている。より効率よく検出例を増やせるよう、優勢阻害細胞などの利用を含み詳細に検討を進める。
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Causes of Carryover |
今年度はオートファゴソーム膜閉鎖検出の方法を検討することに時間を費やしたため、試薬やプラスチック等の消耗品の使用総量が当初の計画よりも少なかった。 次年度は、今年度に検討した方法を用いて多くのサンプルで解析をする計画なので、消耗品の使用量が大幅に増加し、物品費がかさむ予定である。
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