2017 Fiscal Year Research-status Report
Structural Basis for drug transport by ABC transporters
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17K07306
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小段 篤史 京都大学, 農学研究科, 特任助教 (80360543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HIPOLITO CHRIS 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20759914)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生体分子 / 蛋白質 / ABC輸送体 / 分子メカニズム / 立体構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの持つ48種類のABC蛋白質は生理的に重要な役割を負っており、それぞれの遺伝子の異常が様々な疾病(癌の薬剤耐性、糖尿病、動脈硬化、老人性の失明、アルツハイマー病など)と関連している。ABC輸送体とりわけP糖蛋白質がどのような仕組みで薬物を認識し輸送しているのか、その分子メカニズムの詳細な立体構造基盤は未だ不明であり、その解明はABC蛋白質全般の機能を考える上で重要である。現在、広く受け入れられているABC輸送体の輸送機構は、細胞膜を介して「内向型」と「外向型」の構造が相互変換し、それと同時に輸送薬物に対する親和性が逆転するというモデルである。これまでに「内向型」と「外向型」の双方の結晶構造を同一のP糖蛋白質で明らかにした例はなく、研究代表者らは世界に先駆けて同一の真核生物由来P糖蛋白質ホモログの両結晶構造を高分解能で決定することに成功し、両者を原子レベルで厳密に比較することにより新たな動作原理モデル導き出した。動作原理モデルの妥当性を検証するため、決定した結晶構造を基にデザインしたP糖蛋白質ホモログ変異体の生化学的および物理化学的解析をATPや様々な輸送薬物を加えた条件下で実施し、機能と構造の相関を解析した。同様の解析をヒトP糖蛋白質についても実施し、動作原理モデルの正当性を確認するとともに、脂質フロッパーゼなどの他のABC輸送体と機能の違いを生み出している仕組みを原子レベルで解明し、P糖蛋白質の多剤排出メカニズムについての理解を飛躍的に向上させることに成功したた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で予定していたP糖蛋白質の動作原理の仮説モデルの正当性が検証できただけではなく、P糖蛋白質の働きにとって要となるアミノ酸残基を新たに同定するとともに、MgATPと基質の結合によって引き起こされるP糖蛋白質の分子全体に渡る構造変化の伝達機構の理解を飛躍的に向上させることに成功した。現在、得られた成果を論文にとりまとめ投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
P糖蛋白質の解析で得られた知見を活用し、今後、標的分子を他のABC輸送体にも拡大し、立体構造を原子レベルで決定することにより、それらの分子機構の構造基盤を解明する。すでに標的分子となるヒトABC輸送体をいくつか選定できており、タンパク質の大量発現、精製タンパク質の調製を行い、それらの構造解析を目指す。
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Causes of Carryover |
得られた成果を投稿論文にとりまとめる過程において、当初の予定よりも多数の変異体を用いて、ATPや様々な薬剤存在下での生化学的解析による検証が必要となった。そのため、申請時に予定していた論文別刷料、研究成果発表費用の請求が次年度に持ち越された。現在、論文を投稿中であり、次年度に論文別刷料、研究成果発表費用として使用する予定である。
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