2018 Fiscal Year Research-status Report
Structural Basis for drug transport by ABC transporters
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17K07306
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小段 篤史 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (80360543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HIPOLITO CHRIS 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20759914)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生体分子 / 蛋白質 / 膜蛋白質 / ABC輸送体 / 分子メカニズム / 立体構造 / 構造変化 / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
代表的なABC輸送体であるP糖蛋白質はATPを駆動力として幅広い構造の多種類の薬物を認識し細胞や体内から排出している。P糖蛋白質が一体どのような仕組みで働いているのか、その詳細な分子メカニズムはこれまで未解明であり、その解明はABC蛋白質全般の機能を考える上で重要である。研究代表者らは世界に先駆けて同一のP糖蛋白質分子の「内向型」と「外向型」の双方の結晶構造をを高分解能で決定した。とりわけ「外向型」構造は、ABC輸送体の立体構造の中で最高分解能の1.9オングストロームで決定することに成功し、同輸送体の原子レベルでの動作原理の解明に繋がった。すなわち、両構造の比較により、1)ATPとMg2+イオンの結合により引き起こされるATP結合ドメインから膜貫通ドメインへの構造変化の伝達機構、2)膜貫通ドメイン中央の空間の収縮と弛緩によるダイナミックな変化、3)交互に開閉することで基質の逆流を防止している2つの排出弁、などの仕組みを初めて見いだした。また、P糖蛋白質には膜貫通ヘリックス1と3の間の強固な相互作用が認められたのに対し、脂質フロッパーゼであるバクテリアのホモログの構造にはそのような相互作用が認められなかったことから、この相互作用の有無が多剤輸送体とフロッパーゼを区別していることが明らかとなった。さらに、ATP結合ドメイン同士の二量体を安定化させる掛け金の役割を果たすアミノ酸残基のペアが輸送機能に不可欠であることを明らかにした。以上のように、ATPを駆動力として多様な薬物を絞り出すように排出するP糖蛋白質の動作原理を原子レベルで詳細に明らかにし、重要な役割を果たすアミノ酸残基については変異体の機能解析により上記の動作原理におけるその役割の正当性を証明した。得られた研究成果をとりまとめて論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
P糖蛋白質の動作原理の解明について、想定を上回る著しい理解の進展がみられ、得られた研究成果をとりまとめて論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
P糖蛋白質の立体構造研究で得られた知見を活用し、標的分子を他のヒトABC輸送体へと拡大し、メカニズム解明のための研究を推し進める。現在、構造解析に適したヒトABC輸送体試料の調製系を確立して結晶化とともに電子顕微鏡による解析を検討中であり、立体構造を原子レベルで決定する。
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Causes of Carryover |
本研究で対象とするABC輸送体を精製するためには、可溶化に適した界面活性剤が必須であるが、新たに適用することとした高額の界面活性剤が受注生産のため本年度中に納品がなされなかったため。次年度の早い時期に同界面活性剤を消耗品費としてし使用する予定である。
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Research Products
(4 results)