2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞質内分子流動に関わる内膜微小揺動の発生機序とその生理作用の解明
Project/Area Number |
17K07311
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
和田 郁夫 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40182969)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小胞体 / 揺動 / タンパク質拡散 / フォールディング |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では細胞内膜である小胞体膜が示す特徴的な揺動について、その特徴、作用機序と影響について解析を行っている。小胞体膜が細胞全体に広がるようにキネシンを用いて微小管に沿って直線的で方向性のある動きを行う事は古くから知られていた。本研究が対象とする揺動は、高速高分解能観察により明らかになったもので、動きに方向性はない。動き自体を詳細に定量化したところ、不規則にみえるものの、ほぼ全域において毎秒23回程度の周期性が見られた。しかしさらに時間分解能を上げて解析したところ、これは測定の時間分解能に依存する見かけの周期性であり、特定の周波数を持つ訳ではないことがわかった。これは小胞体のような柔らかな構造体全体で動きが発生していることの特徴である。この揺動が小胞体のネットワーク構造を決定するとされる膜結合型GTPaseであるAtlastinファミリーにより起こされる可能性について、COS-7細胞に存在するすべてのisoformを発現欠損・抑制させて調べたところ、形態に大きな異常は観察されたが、揺動自体には基本的に影響しなかった。ただ、この過程で、揺動を増加させることが可能なことに気がつき、これまでの酸化的条件での停止という知見と併せて因子の特定を進めることが可能になった。関連する知見の一つとして、内腔でのタンパク質の動きを調べるとflowの特性を持つということが報告された(NatureCellBiol(2018)20:1118)。この点に関連した解析は以前報告しており、今回改めて解析を行ったが、カーゴがinertである限りは内腔タンパクの振る舞いは小胞体構造だけが決定し等方的であり内腔に特別なflowが存在することには否定的な結果が得られた。報告で用いられたモデル分子の運動の方向性はミスフォールドする集団が混在することによる可能性があり、この可能性を検討している
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本現象は学会発表後、注目を集め、主要雑誌に論文が相次いで報告された(Science (2016)354:6311, Cell(2018)175:1430)。このため、とりまとめ内容を変更する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
小胞体の揺動は制御されることなく一定で、酸化的条件での停止以外には変化しないと考えてきたが、今年度得られた新たな知見により、新たに増加させることも可能なことがわかった。この知見を利用して因子の絞り込みが可能になり、生化学的手法により同定を行っている。これらの新知見を取り込んでとりまとめる。
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Causes of Carryover |
DNA合成と配列解析、並びに試薬、特に抗体購入に要する費用を、海外から直接購入することで、大幅な削減できたことによる。今年度もこの方法を進めつつ、とりまとめと発表に関する費用については予定通り行う。
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Research Products
(5 results)