2019 Fiscal Year Research-status Report
非凍結結晶を用いたタイムラプスX線回折測定による酵素反応の解析
Project/Area Number |
17K07317
|
Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
村川 武志 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90445990)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 秀行 大阪医科大学, 医学部, 教授 (00183913)
馬場 清喜 公益財団法人高輝度光科学研究センター, タンパク質結晶解析推進室, 主幹研究員 (00437344)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | トパキノン / HAG法 / アミン酸化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,近年開発されたHAG法(湿度調整と水溶性ポリマーのコーティングを用いたタンパク質結晶マウント法)をさらに発展させ,温度やpHが正確に制御された環境下での結晶内の酵素反応を直接観察することを目的としている.具体的には土壌細菌由来銅含有アミン酸化酵素(AGAO)を材料とし,触媒サイクル(酸化的脱アミノ反応)におけるpH・温度に依存したコンフォメーション変化と,TPQ生合成過程における前駆体Tyr残基から補酵素TPQへの構造変化の2つに焦点を当てる.本年度はTPQ生合成過程について主に解析を行った. AGAOは,活性中心に補酵素トパキノン(TPQ)および二価銅イオンを含み,第一級アミン類の酸化的脱アミノ反応を触媒する.補酵素TPQは,酸素および銅イオン存在下で,前駆体Tyr残基から自己触媒的に生成する.本年度は,HAG法を用いて,Tyr残基からTPQ生合成反応の解析を行った. まず本酵素の前駆体(Tyr型)結晶を作成したのち,嫌気条件下で銅イオンを浸漬した.その後,嫌気状態を保ったままSPring-8へ輸送し,ビームラインに設置されたHAG装置によって本結晶をマウントした.この結晶にさらに酸素(空気)を吹き付けることにより,結晶内でのTPQ形成反応を開始した.酸素添加後,経時的に回折測定を行い,反応を追跡したところ,結晶内で最終的にTPQが形成したことを確認できた.現在,詳細な解析を行っているが,構造変化についての重要な知見が得られ,我々がこれまでに提案した反応スキームをさらに拡張できた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究3年目であり,申請課題の後半部分について,前年度確立した測定条件に基づき本測定を行った.十分な条件検討と予備測定が行われていたため,比較的早い段階で本測定に成功し,現在は詳細な構造解析を行っている.結晶顕微分光装置が完成したため,現在それの予備測定を行っており,条件が確立次第本測定を開始する.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度までに申請段階で提案した主要テーマのおおよそが完了できた.今後は,完成した結晶顕微分光装置を用いてより詳細な反応機構の解析をおこなう.
|
Causes of Carryover |
本研究課題は,タンパク質結晶のX線結晶構造解析を主な手段とし,銅含有アミン酸化酵素の触媒機構および補酵素生合成機構を明らかにすることを目的としている.前者は既に終了し論文発表も行ったが,後者については申請時には設計段階であった結晶顕微分光装置がごく最近完成し,それを使用した分光学的なデータが加われば,より精密な機構が明らかになると期待できる.このため,補助事業期間を延長するために令和元年度は研究費の節約に努め,50万円程度繰り越した.これらを主に結晶調製用の試薬および測定施設(SPring-8)までの旅費に使用する予定である.
|