2018 Fiscal Year Research-status Report
クロライドポンプNM-R3イオン輸送機構の解明と時分割シリアルフェムト秒構造解析
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17K07324
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
保坂 俊彰 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (40462725)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クロライドポンプ / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋性細菌Nonlabens marinus由来NM-R 3 (N. marinus rhodopsin-3)は光駆動性クロライドポンプである。光駆動性クロライドポンプの中で最も研究が進展しているハロロドプシン(HR)とは異なる系統から独自に進化し、アミノ酸配列から大きな違いが認められる。申請者は、このNM-R3の構造解析に成功し、HRやバクテリオロドプシンなど他の細菌型ロドプシンとの相違点を明らかとしたが、詳細なイオン輸送機構については未知の部分が残っている。そこで、本研究では、NM-R3のイオン輸送機構の詳細な解明を、構造の面から明らかとすることを目的とした。 2018年度は、研究実施計画に基づいて、大腸菌無細胞合成系を用いてNM-R3を合成・精製・結晶化を行い、①共同研究者と合同で分光法による実験を行い、ヨウ素や臭素を基質として用いた時の、結晶中での光反応サイクルを同定し、②この①の結果を基にして、X線自由電子レーザー施設SACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)において、時分割でのserial femtosecond crystallographyによる4点のtime pointでの回折実験(ポンプ-プローブ実験)を行った。構造解析・精密化を行ったところ、特定波長のレーザーを当てたことによる、レチナールの光反応変化に伴うタンパク質の経時的な構造変化を観測することに成功した。現在は、より詳細な輸送機構を明らかとするためのデータ収集を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SACLAでの時分割serial femtosecond crystallographyによる構造解析と、光反応サイクルの同定については、当初の予定通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年前期もSACLAのビームタイムを得ることができた。このビームタイムにおいて、より多くのデータを蓄積するために結晶の準備をしていく。今後は、変異体実験を行い、光反応サイクルと構造変化の裏付けの実験を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
大腸菌無細胞合成系におけるサンプル合成の効率が非常によく、SALCA用の微小結晶作成が順調に進んだため、大腸菌無細胞合成試薬の使用量が予想より少なかったため、残額が生じた。しかしながら、SACLAにおいて中間体構造解明の為の実験が始まると、多数回の実験用に多量の結晶調製試薬費と出張旅費が必要になってくるために、2019年度に持ち越した。
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