2019 Fiscal Year Research-status Report
高分解能構造解析によるシトクロムb5還元酵素反応系における電子伝達分子機構の解明
Project/Area Number |
17K07325
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
平野 優 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 主幹研究員(定常) (80710772)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中性子回折 / X線回折 / 酸化還元酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質分子間における電子伝達反応機構を理解するためには、それぞれのタンパク質における酸化還元状態調節機構とタンパク質間の電子伝達経路を明らかにすることが重要な課題となっている。酸化還元状態間の構造変化を追跡するためには、タンパク質表面の水分子を含めた全原子構造情報を取得することが必要不可欠であり、電子伝達経路の解明には反応の起こる状態である複合体での構造情報が重要となる。本研究では、哺乳類の肝臓代謝系において脂質合成などに関与するNADH-シトクロムb5還元酵素(b5R)とシトクロムb5(b5)の反応系全体について、X線と中性子それぞれの特長を生かした構造解析を行うことで、水素原子を含めた全原子構造とb5R-b5複合体構造を明らかにし、電子伝達反応において重要な酸化還元状態調節と電子伝達経路の構造基盤を解明することを目的とする。 2019年度は還元型b5Rの中性子回折データ収集およびb5の高分解能X線構造解析を実施した。還元型b5Rを安定化するT66V変異体について試料調製条件および結晶化条件の検討を行い良質な大型結晶作製に成功した。ドイツの研究用原子炉FRM IIの生体分子用回折装置BIODIFFを利用した中性子回折実験の結果、2オングストローム分解能を越える回折データセットを取得することに成功した。酸化型および還元型b5について、放射光施設SPring-8を利用してX線回折データ収集を実施した。その結果、酸化型においてこれまでより高分解能である0.80オングストローム分解能を超える回折データセットを取得することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は還元型b5Rの中性子回折実験およびb5の高分解能X線構造解析を実施した。中性子回折実験に用いる還元型b5Rの大型結晶作製のために、野生型だけでなく還元型を安定化する変異体(T66V)の調製も実施した。酸素存在下で不安定な還元型結晶の作製は無酸素チャンバー内で実施した。その結果、変異体試料において体積1 mm3を超える良質な大型結晶作製に成功した。還元型を保持した状態で中性子回折データ収集を実施するために、無酸素チャンバー内で石英キャピラリーに結晶を封入した。ドイツの研究用原子炉FRM IIに設置された生体分子用回折装置BIODIFFにおいて中性子回折実験を行った結果、2オングストローム分解能を超える回折データセットを取得することに成功した。酸化型b5のX線回折データ収集は、SPring-8のBL44XUビームラインにおいて実施した。その結果、これまで報告されていた0.83オングストローム分解能より高分解能である0.78オングストローム分解能の回折データセットを取得することに成功した。構造精密化の結果、アミノ酸および補因子ヘムに結合する水素原子由来の電子密度を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はb5R還元型の中性子構造解析、b5R一電子還元型、再酸化型の高分解能X線構造解析、b5の中性子構造解析およびb5R-b5複合体のX線構造解析を行う。b5R還元型の中性子構造解析のために、中性子回折データ収集を実施した結晶と同一条件で結晶を準備し、X線回折データを収集する。中性子回折データとX線回折データを同時に利用した立体構造精密化を実施し、水素原子を含めた立体構造情報を取得する。b5R一電子還元型および再酸化型の結晶は、まず無酸素チャンバー内で二電子還元型結晶を作製し、酸化剤の添加もしくは酸素暴露により調製する。b5R一電子還元型および再酸化型結晶は、液体窒素中で凍結する。b5R一電子還元型および再酸化型が結晶中で保持されているかの確認は、顕微分光装置を利用し吸収スペクトル測定により行う。X線回折実験は、放射光施設(Photon FactoryおよびSPring-8)において行う。1オングストローム分解能を超える高分解能X線回折データ収集ができれば、水素原子を含めた立体構造精密化を行う。b5の中性子回折データ収集に必要な大型結晶は、結晶化母液量を20倍程度に増やすことで作製する。中性子回折実験は、大強度陽子加速器施設J-PARCのiBIXまたは、より強度の強い中性子ビームや単色中性子を利用できる海外の中性子回折装置(アメリカSNS MANDI、ドイツFRM-II BIODIFF)において行う。b5R-b5複合体のX線回折データを取得するため、複合体の調製および結晶化は無酸素チャンバー内で実施する。結晶が取得できたら、X線回折実験は国内の放射光施設において行う。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた回折実験用試薬等の消耗品およびデータ解析用ハードディスク等の消耗品の購入を取りやめたことと、当初予定していた出張を取りやめたため次年度使用額が生じた。そのため、次年度分の予算と合わせて回折実験用試薬等において研究費を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)