2020 Fiscal Year Annual Research Report
High-resolution structural studies of electron transfer reaction mechanism in the redox cycle of NADH-cytochrome b5 reductase
Project/Area Number |
17K07325
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
平野 優 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 主幹研究員(定常) (80710772)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中性子回折 / X線回折 / 高分解能 / 酸化還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の関与する酸化還元反応機構を理解するためには、タンパク質における酸化還元状態調節機構と電子伝達経路を明らかにすることが重要な課題となっている。酸化還元状態間の構造変化を追跡するためには、タンパク質表面の水分子の水素を含めた全原子構造情報の取得が必要であり、電子伝達経路の解明には反応の起こる状態の立体構造情報が重要となる。本研究では、哺乳類の肝臓代謝系において脂質合成などに関与するNADH-シトクロムb5還元酵素(b5R)とシトクロムb5(b5)の反応系全体について、X線と中性子それぞれの特長を生かした構造解析を行うことで、水素を含めた全原子構造とb5R-b5複合体構造を明らかにし、電子伝達反応において重要な酸化還元状態調節と電子伝達経路の構造基盤を解明することを目的とする。 2020年度は還元型b5Rの中性子構造解析および酸化型b5の中性子回折実験を実施した。還元型b5Rを安定化するT66V変異体について、中性子とX線回折データを相補的に利用した構造解析を実施し、2種類の補因子(FADとNAD)に結合する水素の結合状態を可視化することに成功した。酸化型b5について良質な大型結晶作製に成功し、大強度陽子加速器施設J-PARCの生体高分子用回折装置iBIXを利用した中性子回折実験により、1.5オングストローム分解能を超える回折点を観測することができた。 研究期間全体としては、酸化型および還元型b5Rの水素を含めた全原子構造情報取得を達成した。この結果、b5Rの水素移動反応に重要と考えられる補因子周辺の立体構造が明らかとなった。またb5において、これまでより高分解能の回折データを取得できたことで、全原子構造解析および電子状態を含めた立体構造解析が実現可能となる見通しが立った。以上の結果から、酸化還元反応の分子機構理解の全容解明に繋がる成果を創出することができた。
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