2018 Fiscal Year Research-status Report
G蛋白質の活性調節因子として働くヒトのグロビン蛋白質の機能制御機構の解明
Project/Area Number |
17K07329
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若杉 桂輔 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20322167)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 蛋白質 / 蛋白質間相互作用 / 酸化ストレス / 細胞保護 / 生体分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト脳神経細胞内に存在するニューログロビン(Ngb)は、酸化ストレスに伴う神経細胞死を防ぎ、また、通常酸素濃度正常状態では神経突起伸長を促す。我々は、ヒトNgbが、酸化ストレス環境下では、ヘテロ三量体G蛋白質のαサブユニット(Gαi/o)と特異的に結合し、GDP解離阻害因子(GDI)として機能することによりGαi/oの活性を抑え、cAMP量の減少を抑制することにより細胞死を防いでいることを明らかにした。また、脂質ラフトに存在するflotillin-1とも特異的に結合し、酸化ストレス下で酸化型Ngbをflotillin-1が脂質ラフトに運ぶことを明らかにした。さらに、最近、ヒトNgbがトリプトファン(Trp)代謝酵素と相互作用することがyeast two hybrid screeningによる網羅的探索の結果示唆された。本研究では、これら蛋白質間相互作用をさらに解析し、ヒトNgbによる分子制御機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、ヒトNgbとflotillin-1との蛋白質間相互作用部位の特定を目指した。具体的には、モジュール単位で短くした9種類のtrucated Ngbを作製しyeast two hybrid 法を用いて、flotillin-1と相互作用するかどうか解析し、また、相互作用することが明らかになったtrucated NgbをグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質として発現・精製後、flotillin-1と直接相互作用することの確認も行った。さらに、ヒトNgbの酸化ストレスに対する細胞保護効果におけるトリプトファン(Trp)代謝酵素及びトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)の役割の解析も進めている。本年度は、TrpRSが免疫寛容の誘導に関わる細胞外から細胞内への高親和性Trp輸送に重要な働きをしていることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. Yeast two hybrid法を用いたNgbとflotillin-1との相互作用部位の解明 本研究では、Yeast two hybrid法を用いて、様々なNgbあるいはflotillin-1断片を酵母菌内で発現させ相互作用の解析を行うことにより、Ngbとflotillin-1との蛋白質間相互作用部位の特定を目指した。具体的には、ヒトNgbの遺伝子は4つのエクソンでコードされており、ヒトNgbは蛋白質レベルで4つのコンパクトな構造単位であるモジュールM1からM4で構成されている。まず、モジュール単位で短くした9種類のtrucated Ngbを作製しyeast two hybrid 法を用いて、flotillin-1と相互作用するかどうか解析した。次に、相互作用することが明らかになったtrucated NgbをグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質として大腸菌を用いて発現・精製し、flotillin-1と直接相互作用するかどうかin vitroの系でも確認を行った。さらに、trucated Ngbをさらに短くしたものでもflotillin-1と結合できるかどうか、また、flotillin-1に関しても短くした様々なtruncated flotillin-1を作製し、Ngbとの結合を解析した。これらの結果を現在、投稿論文としてまとめているところである。
2.酸化ストレスに対するヒトNgbの細胞保護効果におけるトリプトファン(Trp)代謝酵素及びトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)の役割の解析 本年度は、トリプトファン(Trp)代謝酵素であるインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)とTrpRSが、免疫寛容の誘導に関わる細胞外から細胞内への高親和性Trp輸送に重要な働きをすることを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 酸化ストレスに対するヒトNgbの細胞保護作用におけるトリプトファン(Trp)の生理的意義の解明 インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)などのトリプトファン(Trp)代謝酵素及びトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)がヒトNgbと相互作用するのかどうか解析を行う。さらに、ヒトNgbの酸化ストレスに対する細胞保護作用におけるそれら蛋白質間相互作用の重要性を明らかにすることに挑む。
2. グロビン蛋白質によるG蛋白質の活性制御機構の探索 本研究では、G蛋白質としては、三量体G蛋白質αサブユニット(Gα)であるGαi/o, Gαs, Gαq、及び、低分子量G蛋白質であるRas, Rab, Rho, Racを中心に、また、グロビン蛋白質として、ニューログロビン以外のヘモグロビン(Hb)、Hbαサブユニット、Hbβサブユニット、ミオグロビン、サイトグロビン、及び、アンドログロビンをターゲットに網羅的にG蛋白質制御因子としての可能性を探索する。
|
Research Products
(7 results)