2018 Fiscal Year Research-status Report
DNA探索走査装置の多彩な高次複合体構築原理と機能分担
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17K07338
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川上 広宣 九州大学, 薬学研究院, 助教 (50403952)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 染色体複製 / ORC / 機能構造解析 / DNA結合 / 高次複合体形成 / Cdc6 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は出芽酵母の染色体複製起点を認識するORC複合体の解説記事を執筆し、またORCが持つ機能不明の非典型DNA結合能に関する論文採択を目指した。 以前確立した変異ORC複合体の簡便精製法(Kawakami et al., 2016, Front. Microbiol.; Kawakami et al., 2015, Sci. Rep.)を用いて変異ORCを精製し、詳細に解析したところ、とある非典型DNAに対しての親和性が亢進していた。また複製起点DNAへの結合特異性が欠損していた。一方、ATP結合能やATPase能は野生型と同程度保持されていた。この変異ORCを細胞内で発現させると、特定の条件で温度感受性orc変異株の増殖を阻害することが判明した。すなわち、ORCが非典型DNAへの結合能を適切なレベルに保つことが適切な細胞増殖に重要と示唆される(投稿中)。 次に我々は、ORCが非典型DNA上で特異的高次構造を形成することを見いだし、更にこの過程に必要な機能構造も見いだした。また、この動的な構造変化と協調してORCの活性制御が行われることを明らかにした。酵母遺伝学やゲノミクスの解析を更に進め、ヒトゲノミクスを用いた解析でもこの可能性が支持された。我々はこのような制御メカニズムが細胞内でも起きていることを想定している(投稿中)。 加えて、本解析をORCパラログCdc6に拡張する試みを継続した。昨年度の時点でCdc6の非典型DNA結合能を鋭敏に検出する生化学システムを確立し、次に非典型DNA結合能ドメインの同定に成功していた。当該ドメインを欠失すると二重鎖DNAへの結合能も低下したため、結合ドメインの領域限定を行い、二重鎖DNAへの結合能は野生型と同程度保持しつつ、非典型DNAへの結合能が不安定化する変異Cdc6の同定に成功した。現在、慎重に解析を進めている(学会発表済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の5つの目的はすでに明確な成果を得て、国内外の学会で報告済みであり、論文発表にも着手している。そこで、当初計画には無かったORCパラログの解析への展開を併行して進めることが可能となり、実際にパラログにおける有望な変異蛋白質を同定するなど着実に発展した。このため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
投稿中の論文の採択に向けて準備を進めるとともに、その他のデータについても順次論文化を進める。併行して発展的解析を進め、目的5の体系的遂行を十分実現していきたい。
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Causes of Carryover |
30年度に残額647,125円が生じたが、これは次世代シーケンス消耗品を使用せずにヒトゲノミクス解析が可能となったことと、本研究課題の論文化にエフォートを割いたため、実験データの再現性を確認する実験など、試薬の新規購入を意図的に抑える事例が増えたためである。31年度は論文化が一段落し、研究課題を更に発展させる予定であり、発展的実験に必要な消耗品が増える見込みである。また、研究代表者は31年4月に山陽小野田市立山口東京理科大学へ異動となり、ガラス器具などの一般消耗品の大量購入も必要となる。そこで残額は異動先での研究環境を整備し、ORCパラログを含めた解析を加速するためのウェット実験費用に充てる。
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Research Products
(17 results)