2019 Fiscal Year Research-status Report
EGF受容体下流アダプタータンパク質GAREM及びCLPABPの生理機能の解明
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17K07341
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
小西 博昭 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (40252811)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞情報伝達 / タンパク質リン酸化 / アダプタータンパク質 / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
GAREMとCLPABPはEGF受容体下流因子のリン酸化プロテオミクスにより同定した新規アダプタータンパク質である。GAREMには2つのサブタイプ(GAREM1及び2)が存在し、それぞれの培養細胞における役割をこれまで明らかにしてきた。さらにそれぞれのノックアウト(KO)マウスを樹立し、動物個体レベルの役割についても解析を行っている。脳特異的に発現するGAREM2は培養神経細胞の突起伸長に寄与しているのみならず、GAREM2KOマウスは行動解析実験を実施した結果、低不安度と高活動性が見受けられた。その結果を今年度学術論文として発表した。すでにそれぞれのGAREMKOマウスを交配し、両分子種を発現しないダブル(D)KOマウスを作製し、そのマウスも正常に発生・生育することは確認済みである。また、GAREM1KOマウスは野生型マウスより小型で、GAREM1は細胞増殖や個体の成長に関与することが示唆されている。DKOはGAREM1単独KOよりもさらに小型で、GAREM2単独KOよりも顕著な行動的特徴が認められる。GAREM1は脳にも発現しているので、DKOではGAREM2KOマウスよりも脳機能に大きな影響が出ることが予想され、今後はDKOの詳細な行動解析を行う。 両GAREMには数種の共通した機能領域を持つ一方、GAREM1は核局在配列(NLS)を持つため核にも局在するが、GAREM2はNLSがなく、核には局在しない。さらに両GAREMのEGF刺激後の細胞内局在変化も相違が見られ、GAREM2のみ顆粒状の局在を示す。この細胞内局在機構の相違がそれぞれのGAREMの機能解明に重要であると考え、これまでに両GAREM分子種のキメラタンパク質を数種類作製し、局在解析を行った結果、GAREM2特異的に存在するグリシン残基に富む領域付近がGAREM2特有の細胞内局在に重要であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GAREM2KOマウスに関する論文が受理され、GAREMの個体における役割の研究について最初の結果を残すことができた。GAREMDKOマウスの行動解析については先端モデル動物支援プラットフォームに採択され、実施する予定であったが、研究責任者の信州大学農学部への異動などで動物実験を一旦中断せざる負えなくなり、現所属先の研究体制が整いしだい再度申請し、解析を行いたいと考えている。 GAREM1KOについては既に表現型(野生型より小型)は明らかにしており、その原因を含めた内容に関する論文は現在投稿準備中である。 前述の通り、研究実施場所の移動のため、若干解析が滞った期間もあったが、現在は動物関連の研究以外の生化学的、細胞生物学的実験については再開できているので、これまでの計画通り研究を遂行していく所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
GAREM結合タンパク質としてはいくつか同定しているが、特に同じアダプタータンパク質であるIntersectinは、培養細胞レベルではそれぞれの局在も一致し、機能的相関があることが示唆されている。今後、培養細胞のみならず、脳を中心とした動物組織中においても、それぞれの局在を詳細に解析し、その結果にもとづいて動物個体中でのGAREMとIntersectinの相互作用の役割を明らかにする。 GAREM1KOマウスの表現型は野生型マウスよりも小型であることだが、その原因については現在解析中である。近年、突発性低身長症の原因遺伝子探索によりGAREM1の291番目のリジン(K)がアルギニン(R)に置換された変異(K291R)が同定された。人為的に作製したGAREM1(K291R)変異体は、野生型に比較してEGF刺激後の安定性及びErkの活性化能が低いことを明らかにした。GAREM1KOマウスにおいても、GAREM1の機能の低下により成長シグナルが抑制されることが小型化の原因と予想され、mTORシグナルなどにも着目しながら論文としてまとめていく所存である。 GAREMの研究についてはある程度進展している一方で、CLPABPについては若干解析が滞っているのが現状である。CLPABPは転写物の安定性に関与することを明らかにしており、現在までにRNA-seq解析から、CLPABPの発現の有無により発現量に影響が見られる遺伝子を数多く同定している。それらについての検証を重点的に行う予定だが、転写量が優位に増減する候補は1500種に及ぶため、特に機能未知因子に着目して解析していく。また、CLPABPは摂食量調節ホルモンであるレプチンのmRNA安定性に関与することで、高齢オスマウスの体重制御に寄与しているので、エネルギー代謝関連や、ミトコンドリア機能に関与する遺伝子について優先的に解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
異動先(信州大学農学部)で上記の研究の遂行に支障がないように研究体制を早急に整えるための費用に充てる。 具体的には動物細胞用実験室のレンタル費用、研究者個人では設置が困難である純水装置設置費用等に使用させていただく。
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[Journal Article] Behavioral alterations in mice deficient for GAREM2 (Grb2-associated regulator of Erk/MAPK subtype2) that is a subtype of highly expressing in the brain2019
Author(s)
Nishino, T., Tamada, K., Maeda, A., Abe, T., Kiyonari, H., Funahashi, Y., Kaibuchi, K., Takumi, T., and Konishi, H.
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Journal Title
Mol. Brain
Volume: 12
Pages: 94
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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