2017 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病発症における小胞体ストレス誘導性カルシウムシグナリングの関与の解明
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17K07345
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
山本 伸一郎 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (10542102)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カルシウムシクナリング / 小胞体ストレス / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓 β 細胞はインスリンを分泌することで血糖を低下させることができる唯一の分泌細胞である。高血糖下ではインスリンを大量に合成・分泌し、血糖をコントロールしなければならない。高血糖状況が持続すると、β 細胞において小胞体ストレスが引き起こされる。この小胞体ストレスは高まったインスリン合成需要に対して小胞体の folding 能が追いつかず、unfolded protein の蓄積により引き起こされると考えられている。このような小胞体ストレスによる小胞体の恒常性の破綻が二型糖尿病の発症に関与する。小胞体ストレスは β 細胞において活性酸素種や炎症性サイトカインの産生を引き起こす。そして血球細胞の浸潤を伴って、β 細胞障害がもたらされる。従って二型糖尿病は炎症性疾患の側面を有していると言え、二型糖尿病と小胞体発の炎症応答の重要性が近年認識されつつある。二型糖尿病における小胞体ストレスと活性酸素種・炎症性サイトカイン産生の重要性は認識されているが、詳細な機構については明らかにされていない。 形質膜上に発現する TRPM2 は Ca2+ チャネルであり活性酸素種などの酸化ストレスによって活性化される。TRPM2 は、膵臓の β 細胞に高い発現が認められている。申請者はこれまで単球/マクロファージにおいて活性酸素種による TRPM2 の活性化を介した Ca2+ 流入が炎症性サイトカイン産生誘導に関与することを明らかにした。 申請では二型糖尿病における小胞体ストレスによる活性酸素種産生と炎症性サイトカイン産生に着目し、それをつなぐ分子実体として TRPM2 の関与を解明する。まずマウスから単離した膵島を用いて in vitro レベルから検討を始め、最終的には糖尿病モデルマウスを用いて in vivo レベルの検討を行い、二型糖尿病における TRPM2 の病態生理的意義を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの膵臓から採取した膵臓 β 細胞において過酸化水素による細胞内 Ca2+ 濃度上昇は TRPM2 を介していることを確認できた。また膵臓 β 細胞を高グルコース処置することで、過酸化水素による細胞内 Ca2+ 濃度上昇が促進されることが分かった。また本来平成30年度に計画していた糖尿病モデルマウスである Akita マウスを用いた検討を平成29年度より行った。Akita マウスはヒトのインスリンに相当するインスリン2の遺伝子に変異をきたしており、96番目のアミノ酸残基であるシステインがチロシンに置換されるインスリン2が産生される。変異インスリン2は正しく折りたたまれることが出来ず、不良タンパク質として小胞体内に蓄積する。そして、膵臓 β 細胞において小胞体ストレスを惹起し、細胞障害を伴うインスリン分泌低下を引き起こし、糖尿病を発症する。検討の結果、TRPM2 を欠損した Akita マウスでは、通常の Akita マウスと比較して生後5週齢から16時間絶食後の血糖値が低いというデータがとれつつある。このデータは TRPM2 が膵臓 β 細胞において膵臓 β 細胞障害に関与していることを示すものである。申請計画とは順番が前後する実験があったが、『二型糖尿病における TRPM2 の病態生理的意義を明らかにする』という目的を達成するためのデータは得られているので、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
各週齢における16時間絶食後の血糖値については現在も測定中なので、20週齢まで体重変動もあわせて測定し、データの蓄積を続ける。また TRPM2 を欠損した Akita マウスでおよび通常の Akita マウスにおける糖負荷によるインスリン分泌や血糖値変動などの耐糖能、および膵臓における β 細胞の形態学的な変化も観察する。現在のところ TRPM2 が小胞体ストレスによる膵臓 β 細胞障害に関与していると考えているが、そのようなことが何故起こっているのかについてもアプローチする。TRPM2 を欠損した Akita マウスでおよび通常の Akita マウスの膵臓 β 細胞における遺伝子発現の違いをマイクロアレイを用いて網羅的に調べ、その詳細を明らかにする。
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Causes of Carryover |
動物実験を先行させて実行したため、マイクロアレイや in vitro 実験を行うために必要な試薬を平成29年度では購入しなかったため。
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