2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K07348
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
若菜 裕一 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (90635187)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オルガネラ膜接触 / 小胞体 / ゴルジ体 / 小胞輸送 / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは以前、トランスゴルジネットワーク(TGN)から細胞膜への輸送を仲介する輸送小胞であるCARTSの形成に、小胞体-ゴルジ体膜接触を介したセラミド・コレステロール輸送が必要であることを報告した。しかし、CARTS形成の過程において、積み荷タンパク質の選別やプロセシングを膜接触がどのような仕組みで制御しているのかは不明である。また、膜接触部位における脂質輸送の制御機構についてもこれまでほとんど明らかになっていない。今回私たちが取り組んだ課題は以下の3点である。 (1) TGNにおけるCa2+依存性積み荷選別に小胞体-ゴルジ体膜接触は関与するか?:FRETに基づくCa2+センサーを利用してTGN内腔Ca2+の測定系を構築することができたが、膜接触がTGNのCa2+ホメオスタシスに関与することを示すのに十分な検出感度が得られなかった。 (2) SCAPの小胞体-ゴルジ体接触部位における生理的役割の解明:SCAPは、コレステロール欠乏時に転写因子であるSREBPをゴルジ体へ輸送し活性化するコレステロールセンサーである。私たちは、小胞体膜に局在するSCAPがコレステロール輸送複合体との相互作用を介して、CARTS輸送小胞形成に働くことを明らかにした。この研究成果は、SCAPの新規機能ならびにコレステロール輸送制御機構の解明につながることが期待される。 (3) APEXタグ法に基づく小胞体-ゴルジ体接触部位新規構成タンパク質の探索:今回私たちは、新規構成タンパク質の候補としてV型H+-ATPase 構成因子であるATP6V0A2を見出した。複数の膜接触部位構成因子の発現抑制によりTGN内腔pHの上昇が認められたことから、小胞体-ゴルジ体膜接触がV-ATPase活性の制御を介してCARTS形成時の積み荷タンパク質の選別およびプロセシングに関与する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ca2+依存性積み荷選別への小胞体-ゴルジ体膜接触の関与の解析については、期待した成果が得られなかったものの、SCAPの解析や膜接触部位新規構成タンパク質の探索については、大きな進展があった。 脂質ラフトに局在するglycosylphosphatidylinositol (GPI) アンカー型膜タンパク質の輸送に対するSCAP発現抑制の影響を調べた結果、ゴルジ体から細胞膜への輸送に遅延が見られた。Reverse Dimerization Systemを利用した誘導型のCARTS形成実験系を今回新たに構築し解析を行った結果、SCAP発現抑制細胞ではコントロール細胞に比べCARTS形成量が約80%低下していることがわかった。また、Bimolecular Fluorescence Complementation(BiFC)に基づく解析の結果、小胞体膜のSCAPが膜接触部位でVAP-A-OSBP-Sac1コレステロール輸送複合体と相互作用することが示唆された。 APEXタグ法による小胞体-ゴルジ体接触部位新規構成タンパク質の探索においては、当初計画していたOSBP PH-FFAT変異体のAPEX融合タンパク質だけでなく、VAP-AのAPEX融合タンパク質も利用し、小胞体-ゴルジ体接触部位構成タンパク質のビオチン標識を行った。精製タンパク質を質量分析した結果、ゴルジ体に局在することが報告されている複数のOSBP-related protein (ORP)ファミリータンパク質に加えて、V型H+-ATPase 構成因子であるATP6V0A2(TGNに局在)が見出された。この結果に基づき、小胞体-ゴルジ体膜接触とTGN内腔pHホメオスタシスの間に関連があるのではないかと考え、TGN内腔pHを測定するための実験系を構築した。結果として仮説を支持するデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
SCAPが小胞体-ゴルジ体接触部位でのコレステロール輸送に関与することの直接的な証拠を得るため、下記(1)から(3)の実験に取り組む。また、小胞体-ゴルジ体接触部位におけるATP6V0A2の機能を解明するため、ノックアウト細胞を用いて解析を行う(4)。 (1) SCAPによるSac1活性制御の解析:私たちの結果から、SCAPはコレステロール輸送複合体を構成するSac1脂質ホスファターゼと相互作用することが示唆された。SACP発現抑制および過剰発現がSac1活性に及ぼす影響を、ミクロソームを用いたin vitro実験系で調べる。 (2) SCAP発現抑制細胞のゴルジ体コレステロール含有量の測定:SCAP安定発現抑制株を樹立する。この細胞からショ糖密度勾配遠心分画法によりゴルジ体膜を単離し、コレステロール含有量をガスクロマトグラフィー質量分析法で解析する。 (3) ステロール輸送in vivo実験系を用いた解析:SCAP発現抑制細胞がステロール輸送に及ぼす影響を調べる。具体的には、培地に添加したデヒドロエルゴステロール(自家蛍光を有する)が小胞体からゴルジ体へと膜接触を介して移行する様子を観察する。 (4) ATP6V0A2ノックアウト細胞の解析:既に樹立したATP6V0A2ノックアウト細胞株を利用し、CARTS形成および、CARTS積み荷タンパク質の選別、プロセシングへの影響を調べる。
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Causes of Carryover |
物品の納入が年度末となり、支払いが次年度になったため。
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