2019 Fiscal Year Research-status Report
酵素合成コンドロイチン硫酸のナノ粒子複合体の調製と,CS受容体の探索と機能解析
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17K07352
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
杉浦 信夫 愛知医科大学, 分子医科学研究所, 客員研究員 (90454420)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / グリコサミノグリカン / プロテオグリカン / ナノ粒子 / リポソーム / 熱帯熱マラリア / VAR2CSA / 感染赤血球 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯熱マラリアの病原体であるマラリア原虫が産生し、その感染赤血球の表面に出現する膜タンパク質VAR2CSAは胎盤絨毛の合胞体栄養細胞膜表面に存在するコンドロイチン硫酸(CS)プロテオグリカン(PG)に結合する。そして、マラリア原虫感染赤血球は胎盤内に潜伏して、体内の防御機構から逃れて、患者(妊婦)の病状は悪化・長期化する。この病状を妊娠マラリアと呼ぶ。本研究代表者はVAR2CSA組換えタンパク質と固相化CS-PGとの結合を阻害する活性について,酵素合成CSライブラリーを用いて測定した。VAR2CSAの結合を強く阻害するCSA20糖鎖を見出した。 本研究代表者は,このCSA糖鎖を利用して、マラリア原虫感染赤血球に対抗できるナノ粒子製剤の創製を試みている。CSAとリン脂質との結合体を化学合成し、別途調製した脂質由来のリポソームに導入して、CSA-リポソーム型ナノ粒子を調製した。このCSA-リポソームは単独遊離のCSA20糖鎖よりも、VAR2CSAタンパク質の固相化CSAに対する結合を、約600倍強く阻害した。さらに,抗マラリア剤(メフロキン)をこのCSA-リポソームに封入させることに成功した。これを抗マラリア剤封入CSAナノ粒子製剤として,妊娠マラリア治療薬の開発をめざして検討を進めている。具体的には,抗マラリア剤封入CSAナノ粒子が,マラリア原虫感染赤血球と結合・融合することにより,抗マラリア剤が感染赤血球内部に注入され,マラリア原虫を選択的に攻撃するとの仮説を実証するための実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マラリア原虫感染赤血球表面に出現する膜タンパク質VAR2CSAに対し,強い相互作用を示すCSA糖鎖の還元末端に,リン脂質(ホスファチジルエタノールアミン, PE)を還元アミノ化法により化学的に結合させ,CSA-リン脂質結合体(CSA-PE)を合成した。別途,リン脂質(ホスファチジルコリン、 PC)とコレステロール(Cho)からなるリポソームを調製し、そのリポソームにCSA-PEを37℃で2時間処理することにより,効率よくCSAを表面に修飾したリポソーム(CSA-リポソーム)を調製した。 このCSA-リポソーム型ナノ粒子は粒子径が100 nmと揃っており,4℃で少なくとも3ヶ月は安定であった。また,CSA-リポソームは単独遊離のCSA20糖鎖に比べ、VAR2CSAと固相化CSAとの結合活性を強く阻害した。 脂質だけのリポソームに低分子抗マラリア剤(メフロキン)を加え,室温で1時間処理することで,抗マラリア剤封入リポソームを作製した。このリポソームにCSA-PEを作用させると,抗マラリア剤封入CSA-リポソームが調製出来た。同様に蛍光標識リポソームと蛍光標識CSA-リポソームを調製した。 通常の培養細胞株(HeLa, HepG2)に,蛍光標識リポソームをもちいて,細胞への取り込みを蛍光顕微鏡で検証した。脂質のみのリポソームは大量に細胞に取り込まれるのに対し,CSA-リポソームはほとんど取り込まれなかった。これは,リポソームにCSAを標識することで,通常の細胞への作用は少なく,おそらくCSA結合性分子を表面に持つ細胞にのみ,作用すると考えられる。 このように,本研究はおおむね順調に進んでいる。しかし,最終的な目標には至っていないので,1年延長する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)CSA-リポソームにおいて、リポソーム含有脂質などを変化させて、リポソームの安定性や細胞への取り込みの影響などを検討する。そして、ナノ粒子製剤としてより適したCSA-リポソームの調製方法を確定する。 (2)蛍光標識CSA-リポソームを用いて各種細胞との親和性解析や血中安定性および動物へ投与した時の血中動態・組織移行性などを測定する。 (3)VAR2CSA発現マラリア原虫(共同研究している東北大学・加藤研究室で入手済み)をヒト赤血球で培養して,CSA結合性により選別しVAR2CSA発現感染赤血球株を樹立する。 (4)VAR2CSA遺伝子をヒト細胞に導入し,VAR2CSAを膜表面に発現する細胞株を樹立し,上記感染赤血球株の入手が遅れた場合,代替としてCSA-リポソームの感染阻害効果の評価に使用する。 (5)VAR2CSA発現感染赤血球株あるいは,VAR2CSA膜発現細胞株をもちいて,抗マラリア剤封入CSA-リポソームによる感染阻害効果・マラリア原虫への攻撃作用を評価する。これらにより新たな抗マラリア製剤開発への基盤とする。
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Causes of Carryover |
マラリア原虫産生タンパク質VAR2CSAを表面に提示する赤血球あるいは細胞をもちいた,抗マラリア剤封入CSA-リポソームによる感染阻害効果・マラリア原虫への攻撃作用の評価を行うため。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Receptor destroying enzyme (RDE) from Vibrio cholerae modulates IgE activity and reduces the initiation of anaphylaxis.2019
Author(s)
Yamazaki, T., Inui, M., Hiemori, K., Tomono, S., Itoh, M., Ichimonji, I., Nakashima, A., Takagi, H., Biswas, M., Izawa, K., Kitaura, J., Imai, T., Sugiura, N., Tateno, H., and Akashi-Takamura, S.
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Journal Title
Journal of Biological Chemistry
Volume: 294
Pages: 6659-6669
DOI
Peer Reviewed
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