2017 Fiscal Year Research-status Report
基質認識部位と触媒部位とが独立している新規タンパク質分解酵素の創製
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17K07359
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
伊倉 貞吉 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50251393)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Pin1 / プロリン異性化酵素 / タンパク質分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質分解は生命活動にとって重要な役割を担っている。一方、生命科学分野の研究において、特異性の高いプロテアーゼは、in vivoとin vitroの両面で利用されてきた。また、その中には将来の医療現場での活用の可能性も期待されているものもある。ところが、自然界に存在するプロテアーゼは、基質認識部位の中に触媒部位を含むため、その利用には限界がある。そこで、本研究では、基質認識部位と触媒部位とが完全に分離したプロテアーゼの創製を目的として研究を行っている。これまでの研究で申請者が見出したプロトタイプとなる変異Pin1に対し、平成29年度は、基質認識部位と切断部位に関する解析を行った。基質として、183残基のアミノ酸からなる立体構造既知のタンパク質をモデルタンパク質として用い、このタンパク質中の7箇所のPro残基と、その5残基の前のアミノ酸を、それぞれ、認識部位と切断部位の解析対象とした。各種条件下での反応分解物の解析により、以下の結果が得られた。 (1) 認識部位であるPro周辺のアミノ酸残基の種類は活性に影響しない。 (2) 切断部位のアミノ酸残基の種類は活性に影響しない。 (3) 切断部位の溶媒露出面積の大きさは、活性の高さと正の相関を示した。 これらの結果は、この変異Pin1が、Pro残基だけを認識し、アミノ酸残基の種類に関係なく5残基前のペプチド結合を切断することを示している。このことは、この変異Pin1が極めて汎用性の高いタンパク質分解酵素になりうることを示唆している。本研究では、今後、触媒活性の向上をはかるとともに、将来の商品化の対象として展開を探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、変異Pin1に特異的な基質アミノ酸配列等の解析を行った。野生型のPin1はpThr/pSer-Pro配列に対し高い親和性を示すプロリン異性化酵素であるが、あまり注目されてはいないものの、pThr/pSer-Pro配列の前後の配列も結合に影響している。一方、今回の変異はPin1の基質特異性に大きな影響を与え、プロリン異性化活性の失活と、脱リン酸化Thr/Ser-Proへの結合を示した。また、Pin1は、今回の標的であるPPIaseドメインの他に、pThr/pSer-Pro配列を同様に認識して結合するWWドメインも有するが、脱リン酸化Thr/Ser-Proに対してはWWドメインの結合は見られない。そこで、本研究では、この変異Pin1の基質として、脱リン酸化タンパク質を用いて、WWドメインの影響の無い状態での解析を行った。この目的のために用いたモデルタンパク質は、183残基のアミノ酸からなる立体構造既知のタンパク質である。このタンパク質中の7箇所のPro残基と、その5残基の前のアミノ酸が、それぞれ、認識部位と切断部位の解析対象となる。各種条件下での反応分解物の解析により、以下の結果が得られた。 (1) 認識部位であるPro周辺のアミノ酸残基の種類は活性に影響しない。 (2) 切断部位のアミノ酸残基の種類は活性に影響しない。 (3) 切断部位の溶媒露出面積の大きさは、活性の高さと正の相関を示した。 この結果は、この変異Pin1が標的となるPro残基だけを認識し、アミノ酸残基の種類に関係なく5残基前のペプチド結合を切断できることを示している。このことは、この変異Pin1が極めて汎用性の高いタンパク質分解酵素になりうることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、変異Pin1の触媒部位の最適化を行う。これまでの解析から、変異Pin1の触媒部位には、セリンプロテアーゼに特徴的な触媒3残基が存在することを見出している。しかし、現状の配置は最適とは言い難く、その活性は天然のプロテアーゼに比べて低い。そこで、本研究では、プロテアーゼ活性の最適化を目的として、触媒部位の配置を整えるようなアミノ酸残基の置換変異を導入する。プロテアーゼ活性の測定には、平成29年度の研究で用いたスクリーニング系を適用する。変異Pin1と最も親和性の高い配列をもつ基質アミノ酸配列を用いて、スクリーニング実験を行い、触媒部位の最適化を行う。 最終年度は、さらに一歩進めて、変異Pin1由来のプロテアーゼのミクロ化を行う。プロテアーゼはタンパク質サイズが小さければ小さいほど立体障害を軽減することができ、攻撃可能な標的が多くなることが期待できる。そこで、本研究で創製したプロテアーゼのサイズを小さくすべく、プロテアーゼ活性部位とは遠位にあるN端側のドメインの削除を行う。また、それによって生じる熱力学的不安定性を、C端側ドメインへの変異導入により改善する。ここで問題としている熱力学的安定性は、プロテアーゼ活性にも反映することが予想されるので、その評価系として、本研究の当初から用いているスクリーニング系を用いる。 このようにして、本研究では、100残基程度、すなわち、およそ12kDaの、基質結合部位と触媒部位とが独立したプロテアーゼの創製を完成する。
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Causes of Carryover |
本研究で当初計画していた物品費の支出をキャンペーン時期に発注する等の工夫により抑えることができたため未使用額が発生したが,これは次年度以降の物品費に使用する。
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Research Products
(3 results)