2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜張力シグナルによる遊走細胞のミオシンII集積
Project/Area Number |
17K07366
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岩楯 好昭 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40298170)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ケラトサイト / ストレスファイバ / ミオシン / アクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞が特定の化学物質(誘引物質)の方向に移動する性質は走化性と呼ばれ、血球細胞の免疫応答や神経細胞の組織形成など様々な生命現象で重要な働きを担っている。基質に接着した細胞の移動は、一般的にアクチン重合による前端の伸長とアクトミオシンの収縮による後端の基質からの脱着・収縮によってなされている。細胞前端の細胞膜上のレセプターが誘引物質を感知してから、前後端でのアクチン重合・アクトミオシン収縮にいたる細胞内シグナル伝達経路は詳しく 研究されてきているが、前方の誘引物質を細胞が感知してミオシンIIを後ろに集積させるメカニズムは不明なままである。本研究の大きな目標は、ミオシンIIが後端に集積する細胞内シグナル伝達経路を明らかにすることである。 我々は、細胞先端でのアクチン重合による細胞膜の伸長は (1) ミオシンIIを細胞先端に集積させる、同時に (2) 細胞膜張力の上昇として後端に伝わり後端でもミオシンIIを集積させるという、力学的シグナルによる仮説を提案する。 細胞性粘菌アメーバや好中球など多くの遊走細胞は時々刻々形状を変えながら移動するが、魚類表皮ケラトサイトは半月形の形状を維持したまま弧を前にして移動する。このときアクトミオシンからなるストレスファイバと呼ばれる繊維構造が細胞後部に存在し、この収縮が、移動のメカニズムに大きく関わっているといわれてきた。我々はストレスファイバが後部にできるシグナルを検討するうち、このファイバが単に後部に集まるだけではなく、細胞体内で回転運動することで、細胞の前進移動に貢献していることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、実験対象として細胞性粘菌アメーバや好中球様 HL-60 細胞を使ってきた。本年度、更に、魚類表皮の傷修復に関わる細胞ケラトサイトを用い、そのミオシンの集積に相当する、ストレスファイバの動態を検討するうち、回転という非常にユニークな運動機構を発見することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
速く移動する遊走細胞には細胞性粘菌アメーバや好中球の他、魚類表皮のケラトサイトが研究材料としてよく使われている。ケラトサイトは遊走中その形態が維持されるため、運動メカニズムを評価しやすい。その反面、細胞培養法が確立されておらず、魚体から単離したばかりの初代培養細胞でしか実験できないため、 GFP融合タンパク質の発現など、遺伝子工学的手法を用いた研究が難しい。今後、ケラトサイトでGFP融合タンパク質を観察できる実験系を構築しストレスファイバの回転を生み出す機構の解明を目指す。併せて、細胞性粘菌アメーバ、好中球様HL-60細胞をもちいて、基質の硬さによってミオシンを集積させる様子の違いを詳細に観察し、集積メカニズムの解明を進める。
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Causes of Carryover |
本年度、予定していた高額な薬品類、物品が、他の研究計画と共通して使えるものであり、そちらの研究費でまかなえた。これは、次年度の研究の進行に際し、技術補佐員の雇用などに充当し研究の質と量のさらなる発展につなげる。また、同時に、論文投稿費用などに充当する。
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