2018 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質構造形成における重要部位探索とその進化における選択要因解明
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17K07368
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
高野 和文 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (40346185)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タンパク質 / 立体構造 / アミノ酸変異 / 配列アライメント |
Outline of Annual Research Achievements |
生命活動に不可欠なタンパク質は、そのアミノ酸配列に起因して特異的な立体構造を形成し機能を発揮する。また、タンパク質は生物進化の過程でアミノ酸変異を繰り返し・蓄積しており、相同タンパク質で知られるように、同じ機能のタンパク質は類似のアミノ酸配列と構造を有する。この相同タンパク質のアミノ酸配列アライメントでは、部位によりアミノ酸の保存度が異なる。一般に、保存度の高い部位は機能・構造に重要で、保存度の低い部位はアミノ酸置換が可能であると考えられる。しかし、保存度の低い部位でも安定性低下を引き起こす致命的変異があること、重要でない部位でも進化の過程で変異が生じずに保存されていることが先行研究から分かった。つまり、配列アライメントから機能・構造に重要な部位を特定することは困難で、実験による検証を通して重要部位の探索・同定をする必要がある。本研究では、本研究室で進めている分子進化研究を応用し、新たなタンパク質の立体構造形成における重要部位探索法の構築を行った。モデルとして、好熱性タンパク質であるTk-subとSto-Est、Aac-Estなどを用いて、ランダム変異を導入する進化実験を行い、不活性変異体の同定や変異体ライブラリー・相同タンパク質配列アライメントの比較から、重要部位の同定が可能か実証するとともに変異部位と配列アライメントとの関係を調査した。 その結果、検証した変異体の多くにおいて、高保存部位への変異では活性を低下させ、低保存部位への変異では活性を維持した。しかし、高保存部位への変異で活性維持を、低保存部位への変異で活性低下を引き起こす変異体も少数得られた。これらの結果は、配列アライメントの保存度から各部位の機能・構造に及ぼす影響を完全に予想できないことを示し、さらに、自然進化とランダム変異に何らかの相違がある可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、いくつかのモデルタンパク質について、多くの変異体の作製・解析が進められ、変異可能部位、あるいは、変異不可能部位(致命的部位)のデータがそろってきた。また、多数の変異が導入されながらまだ活性を有する変異体も得られている。今後は、さらに実験を進めるとともに、これらの実験結果を取りまとめ、構造構築メカニズムや進化に関する新たな知見を見出す。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、変異体の作製と解析を進めつつ、構造構築メカニズムや進化に関する新たな知見を見出すとともに、得られた知見の普遍性を検証する。そして、タンパク質進化の理解やタンパク質工学における新たな戦略の構築に繋げる。
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