2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07372
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
板橋 岳志 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (20434384)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の内外で働く熱は、細胞分裂及び染色体分配の精確さに密接に関わることが明らかにされつつある。一方、ミトコンドリアはその熱の細胞内での産生源であり、「卵子の老化」が引き起こす細胞分裂異常や不妊症に直結する細胞小器官として注目されている。しかしながら、細胞分裂期のミトコンドリアの熱産生動態と細胞分裂の制御の関係性を直接検証した実験の報告はない。本研究では、減数分裂期の細胞分裂に着目し、老化に伴う「ミトコンドリアの温度動態」の変調を1卵母細胞レベルで時間的・空間的に顕微解析する。本研究の目的は、減数分裂機構における“細胞分裂を制御する熱”動態を明確にし、ミトコンドリアの熱産生動態と先天性疾患や不妊症を引き起こす卵子の特性・品質との関係性を顕在化することにある。以下に、得られた成果を箇条書きにする。 1.クラゲの卵細胞を用いて、減数分裂過程の2回の細胞分裂の際に、ミトコンドリア温度が上昇していることを示唆する温度感受性蛍光プローブの蛍光強度変化が観察された。 2.ミトコンドリア以外にも、小胞体において、細胞分裂の際に一過的な温度上昇を示す温度感受性蛍光プローブの蛍光強度変化が観察された。 3.減数分裂を完了した卵細胞が受精後に起こす第一卵割においても、細胞内小器官の温度上昇を示す温度感受性蛍光プローブの蛍光強度変化が観察された。 4.先端電子顕微鏡によって、卵自体やミトコンドリアの微細構造を詳細に解析するために、固定・染色・脱水・包埋方法の条件検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画していた実施項目について、計画通りに開始した。しかしながら、11月に研究代表者の異動に伴い、顕微鏡システムの解体・移設・再構築を行う必要があったため、また、異動先の実験室の空調の変動が想定以上に大きかったことから、設備自体の改善に数ヶ月を要している。現在、前所属機関での実験室同様に、細胞内温度が確かに精度高く計測できているか、を検証しており、必要に応じた顕微鏡システムの改良を行っている。このように、光学顕微鏡を用いた実験が遅れているため、先端電子顕微鏡を用いる実験を前倒しに始めた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、細胞全体の温度変化、ミトコンドリア膜電位の解析、細胞周期進行の阻害(例えば、細胞分裂期で停止させる)条件下でのミトコンドリアの温度動態、小胞体などの細胞内小器官の温度動態等を比較解析する。また、実験対象のクラゲにおいて、3ヶ月程度の生存期間中、様 々な週齢に応じた卵母細胞を用いて、ミトコンドリアの量、局在、微細構造の解析を先端電子顕微鏡を用いて行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、異動に伴い、研究が円滑に進められない期間が生じたため、次年度への繰越研究費が生じた。次年度は、研究の遅れを取り戻すべく、研究計画通りに研究費を使用する予定である。
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