2018 Fiscal Year Research-status Report
Ki67抗原が分裂期染色体構築に寄与する分子メカニズム
Project/Area Number |
17K07399
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高木 昌俊 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (60324779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Ki67抗原 / 分裂期染色体 / コンデンシン |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞が分裂期染色体を構築する過程の詳細はいまだ明らかにされていない。申請者は本研究を立案する段階で、分裂期染色体の表層に局在する因子(Ki67抗原)が同過程に貢献していることを報告した。コンデンシン複合体などが染色体構造を内側から支持するのに対し、Ki67抗原は染色体構造を外側から支持すると考えられた。本研究では「Ki67抗原が分裂期染色体構造を支持する分子機構」を多角的に解析し明らかにする。またKi67抗原を主成分とする「分裂期染色体の表層領域」の性状を分析し、その形成機構の理解を目指す。「特定のゲノム領域が常に染色体の表面に露出している可能性」についても初めて検討する。これらの解析を通じて、分裂期染色体構築過程の背後にある原理や分子機構をより深く理解することを目的とする。 初年度において、Ki67抗原とコンデンシン複合体の機能的関係性の解析に注力した。「オーキシン誘導性デグロン(AID)を用いたタンパク質即時分解系」を利用し、それぞれの因子を単独で、または両因子を同時に短時間のうちに分解除去できる細胞を樹立した。両因子を同時除去することにより、分裂期染色体の形態に著しい異常を認めた(染色体同士がひと塊になり、個々の染色体の形や境界を識別することができなくなった)。個々の因子のみの除去では決して観察されない形態異常であることから、両因子が異なるメカニズムで分裂期染色体構築を支持していることが強く示唆された。以上の成果を受け、今年度は特に「Ki67抗原の作用機序の解析」に注力し、Ki67抗原のクロマチン結合に必須であるLRドメインの生化学的性状について新たな知見の蓄積がなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の成果を受けて、今年度は「Ki67抗原の作用機序の解析」に注力した。当初の計画では(1)Ki67抗原が染色体表層領域に局在するために必要なヒストン翻訳後修飾の探索や(2)染色体表層領域に露出しているゲノム領域の同定を端緒とする予定であったが、これらに先立って、まずKi67抗原機能不全変異体(点変異体)を作出することとした。異種生物のKi67抗原オルソログについてアミノ酸配列比較を詳細に行い、その情報を元にして、分裂期染色体への親和性が著しく低い点変異体の作出に成功した。今年度は点変異体の作出に加え、野生型Ki67抗原と点変異型Ki67との性状比較にも多くの時間と労力を費やすこととなり、上述した(1)と(2)について十分な取り組みができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前項に記したように、今年度は「Ki67抗原機能不全変異体(点変異体)の作出と性状解析」に相当の時間と労力を費やし、計画した研究の一部しか遂行できなかった。しかし得られた変異体をネガティブコントロールとして使用することで、今後の解析の効率や精度が著しく上昇すると期待される。適切な技術支援を研究コミュニティに要請するなどの方策も併せ、研究のペースを上げ、当初計画の完遂を目指す。
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Causes of Carryover |
研究の進捗に若干の遅れがあり、当初計画では今年度内に使用する予定であった一部の試薬類の購入を見送り、次年度で購入することとしたため。
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Research Products
(2 results)