2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07410
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
本多 久夫 神戸大学, 医学研究科, 学術研究員 (10289118)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | らせんループ / 初期心臓 / 数理的細胞モデル / コンピュータ・シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
「内臓の非対称とその配置の非対称」の研究を進めるにあたって、これまで行ってきた初期胚心臓のループ形成研究のまとめの作業に入った。はじめ単純な円筒形の初期心臓であるが、心筋細胞が増殖を繰り返しながららせんループであるキラル構造を形成する機構についての研究である。このとき分裂した細胞の一つひとつがキラルな配置を呈すると仮定すればらせんループができることを数理的細胞モデルを使ったコンピュータシミュレーションで示した。このシミュレーションは要素のキラルな性質が積み重なって全体としてキラルな形を形成するというわかりよい機構であるのだが、その要素のキラルは何に由来するのかという問題がおこる。細胞一個がキラルな振る舞いを呈する事実は幾つか知られているが、心筋細胞については知られていない。 そこでもう一つのらせんループ形成機構として、3次元空間で軸についての非対称の幾つかを組み合わせたモデルでキラル構造を形成することを考えた。円筒の腹側が背側よりも大きく成長し屈曲する。これと共に左右非対称な力がかかり、しかもこれが円筒の上半と下半で異なるという仮定である。これにより円筒はらせんループになる。 ニワトリ初期心臓では屈曲したチューブが右に回転することが知られている。マウスの心臓でも最近右に傾く測定結果が出された(これらの事実は現在盛んに研究されている左右非対称な遺伝子発現とつながる可能性がある)。現在、細胞のキラルな性質モデルと非対称の組み合わせモデルの比較検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内臓の非対称性形成についてこれまで考えてきたものと別の要因もある事に気がついた。この要因についての詳しい検討は今後の内臓非対称性の研究に広く役立つ可能性があり、このプロジェクト全体としては順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
内臓の非対称について軸に関する非対称ばかりでなく3次元空間ではねじれなどのキラル構造があり、非対称とキラルの関わりにさらに複雑な内臓の構造ができていることが明らかになってきた。軸に関する非対称それ自体はキラルではない。しかし3次元空間でこの非対称が幾つか組み合わさることでキラル構造ができる。これは数学では自明のことである。これが生物体でも実現されていることを明らかにするという研究ができるようになってきた。
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Causes of Carryover |
論文原稿英文校正など必要な出費があるが予算を超過するおそれがあり次年度に使用することにした。
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Research Products
(5 results)