2018 Fiscal Year Research-status Report
生殖細胞の分化・増殖に必須なmRNA安定性制御機構の解明
Project/Area Number |
17K07411
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
坂本 博 神戸大学, 理学研究科, 教授 (00187048)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生殖細胞 / クロモドメイン蛋白質 / 3'非翻訳領域 / mRNA安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
線虫の生殖細胞の分化・増殖に必須なクロモドメインタンパク質MRG-1の始原生殖細胞への限局は、生殖細胞系列と体細胞系列において母性mrg-1 mRNAの安定性が異なることによるものである。このmRNA安定制御は3’非翻訳領域(3’UTR)に依存しているが、詳細な機構は不明である。本研究では、3’UTRに存在するmRNA安定性制御に必要十分なシス配列を明らかにするとともに、シス配列に相互作用する因子を同定し、mrg-1 mRNAを生殖細胞系列で安定化し、体細胞系列で分解する機構の全容を解明することを目的とする。平成30年度の解析では、前年度にmrg-1 3'UTRと相互作用する因子として同定された細胞骨格系のタンパク質群のうち、トロポミオシンタンパク質LEV-11に注目した。lev-11遺伝子は19種のアイソフォームが存在し、各々が時期・組織特異的な発現を示す例も報告されているが、これらの機能や生理学的意義については明らかにされていない。そこで、mrg-1 3'UTRとの相互作用が期待されるアイソフォームC、及びE(LEV-11 C/E)に対してRNAi法による阻害実験を行ったところ、多くの個体が産卵異常、あるいは胚致死を示した。そのため、始原生殖細胞が形成される胚発生後期におけmrg-1 mRNAの発現解析を行うことができなかったものの、LEV-11 C/Eが生殖細胞形成あるいは初期発生に重要であることが示された。さらに、LEV-11 Eを消化管の元となるE細胞系列で特異的に発現するトランスジェニック線虫を作製し解析を進めたところ、これらの細胞において、mrg-1 3'UTRレポーター遺伝子の発現が亢進する様子が観察された。これらの結果は、LEV-11 C/Eが生殖細胞形成に寄与すると共に、3'UTRを介したmrg-1遺伝子の翻訳促進に関与することを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
lev-11遺伝子については順調に解析が進んだものの、lev-11遺伝子以外の細胞骨格関連因子群については阻害実験の効果が薄く、生殖細胞形成やmrg-1 mRNAが受ける転写後制御への関与を十分に検証することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
他の細胞骨格因子群について、組織特異的な過剰発現実験を中心とした解析によりmrg-1 mRNAが受ける転写後制御への影響を検証する。さらに、本年度の解析においてmrg-1遺伝子の翻訳促進に寄与する可能性が挙げられたlev-11 c/e遺伝子について、その発現様式が明らかとされていないことから、in situ hybridization法によってmRNAの局在解析を行うことでmrg-1遺伝子の発現様式との関連を検証する。
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Causes of Carryover |
lev-11以外の候補遺伝子に対する阻害実験による解析がやや遅れていることに対応するため、変異体作成やin situ hybridization法によるmRNA局在解析に必要とする経費の一部を2019年度に繰り越すことにしたため。
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Research Products
(5 results)