2018 Fiscal Year Research-status Report
RNA結合タンパク質の機能解明から迫る原始卵胞形成の分子機構
Project/Area Number |
17K07422
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
加藤 譲 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (60570249)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | マウス / 卵巣 / 原始卵胞 / RNA制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
RNA結合タンパク質が介する転写後遺伝子発現制御機構は動物種を越えて生殖細胞の発生・分化の様々なプロセスにおいて重要な役割を果たしていることが知られている。マウス卵子形成においても胎仔期の減数分裂及び出生後の卵胞成長過程におけるRNA結合タンパク質の働きが報告されているが、原始卵胞におけるRNA制御機構に関する知見は極めて乏しい。本研究計画はマウス原始卵胞形成過程における卵母細胞内のRNA制御機構を明らかにすることを目的としている。 マウス卵巣において最も未成熟な卵胞である原始卵胞は出生直後において形成され、有限な卵子のリザーバーとして卵巣内で維持される。我々は原始卵胞の形成に関与するRNA結合タンパク質を探索し、ショウジョウバエElavのオーソログであるELAVL2を見出した。Elavl2ノックアウト卵巣は原始卵胞形成不全を起こし、卵母細胞は出生後直ちに死滅する。 ELAVL2の機能を明らかにするため、出生直後の野生型卵巣を用いてRNA免疫沈降・シーケンス解析を行ったところ、P-body及びストレス顆粒と呼ばれる細胞質RNP顆粒タンパク質をコードする遺伝子群がELALV2の有力な標的遺伝子として同定された。そこで我々は原始卵胞形成過程の卵母細胞における細胞質顆粒の動態を免疫染色により解析した。その結果、原始卵胞形成期に向けて卵母細胞内でP-body様の細胞質顆粒が蓄積することを発見した。 P-bodyはメッセンジャーRNAの分解・翻訳抑制に関わる細胞質RNP顆粒である。続いて我々は原始卵胞形成におけるP-body様の細胞質顆粒の役割について検討するため、P-bodyの形成に必須のRNAヘリカーゼDDX6を卵母細胞特異的にノックアウトしてその影響を解析した。その結果、P-body様顆粒の形成は起こらず、また原始卵胞形成が著しく阻害された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の結果をまとめ、投稿論文を作成・投稿し、現在査読中であるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は原始卵胞形成におけるRNA制御機構の重要性を示すことで、当初の目標は達成された。今後の展開として、二つの課題を設定している。 1. ELAVL2の分子機能解析:本研究からELAVL2の発生生物学的意義及びELAVL2下流のRNA制御ネットワークの一端が明らかとなったが、ELAVL2の分子機能については未だ未解明な部分が多く残されている。今後生化学的なアプローチにより、この問題に取り組む必要がある。 2. P-body様細胞質顆粒の分子機能解析:卵母細胞特異的Ddx6ノックアウトにより原始卵胞形成におけるP-body様細胞質顆粒の重要性が示唆された。今後、P-body様顆粒の分子生物学的意義を明らかにするため、この顆粒により制御を受けるRNAの同定及びDdx6ノックアウトにおけるこれらRNAの発現制御について解析する必要がある。
|
Research Products
(2 results)