2017 Fiscal Year Research-status Report
Study of the integration of spatio-temoporal information in vertebrate somitogenesis
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17K07423
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
矢部 泰二郎 基礎生物学研究所, 分子発生学研究部門, 助教 (30470074)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 体節形成 / ゼブラフィッシュ / 器官形成 / 分節時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
分節時計とwavefrontによって作られる時空間情報をもとにした周期的な体節の形成機構を明らかにするため、これらの時空間情報の下流で体節形成に重要な役割を果たすことが知られているRipply2の発現制御機構の解析を行った。具体的には内在性の発現を再現するのに十分な領域を含むゼブラフィッシュripply2遺伝子上流8kbpの領域のプロモーター活性を解析し、培養細胞においてripply2プロモーター活性は分節時計の主要構成因子の一つであるHer1によって直接的に抑制されることを見出した。また、ゼブラフィッシュ胚において内在性のripplyの発現はHer1の過剰発現により抑制されること、及び体節形成時にHer1タンパク発現領域においてripply2の発現が抑制されていることを確認した。これらの結果より、ゼブラフィッシュ体節形成においてはHer1による周期的なripplyの発現抑制を介して、分節時計によって作られた時間情報が体節の分節境界へと変換されていると考えられた。 また、ripply2プロモーター上にはTbx6結合配列が存在し、培養細胞およびゼブラフィッシュ胚においてはripply2の発現はTbx6によって活性化されると考えられた。培養細胞においてこのようなTbx6によるripply2プロモーターの活性化はwavefrontの分子実態であると考えられるFgfシグナルの下流経路の一つであるRAS-ERKシグナルの活性化により抑制され、ゼブラフィッシュ胚においてもERKの活性化阻害剤の処理によりripplyの発現領域が後方へと拡大することが確認された。また、培養細胞においてERKの活性化によりTbx6のリン酸化が亢進することが確認され、これらの結果より、wavefrontはERKによるTbx6のリン酸化を介してripplyの発現を空間的に制御する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ripply2の転写制御機構の解析に関しては概ね予定通りに解析が進んでおり、当初予定していた分節時計とwavefrontにより作り出される時空間情報によるripplyの発現制御機構の概要が明らかになりつつある。光遺伝学を用いた解析に用いるトランスジェニックフィッシュの作成も現在のところ特に問題なく進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に主に培養細胞系を用いて示されたripplyの発現制御ネットワークの体節形成における役割を、免疫組織学的な手法を用いて検証する。具体的には、分節時計、wavefrontおよびripply mRNAの動態を多重染色により可視化し、ネットワークから予測される動態と比較することにより、これらの制御ネットワークの妥当性を評価する。また、平成29年度に予定して実施されなかったATAC seqを用いたripplyプロモーター上の転写因子結合部位の網羅的な同定を行い、平成29年度の解析では同定できなかった新たな転写調節因子の探索を試みる。 また光遺伝学的手法を用いて分節時計やwavefrontの挙動を人為的に操作し、それらの体節形成に与える影響を解析することにより、体節形成における時空間情報のダイナミクスの役割を解析する。最終的には既存のclock and wavefrontモデルにこれらの情報を統合し、より実際の胚発生を反映したモデルを作成する。
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Causes of Carryover |
ripply2のプロモーター解析に関して、平成29年度は次世代シーケンサを用いたATAC seq解析を予定していたが、既存の転写因子結合配列データベースを用いた解析が予想以上に上手くいったためATAC seqを行わずに解析を行った。平成30年度は従来の研究計画に加え、平成29年度からの繰越分の予算を用いて、平成29年度に実施されなかったATAC seq解析を行い平成29年度に行ったデータベース解析では同定できなかった因子の探索を行う予定である。
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Research Products
(1 results)