2018 Fiscal Year Research-status Report
植物の協調的な細胞板形成の分子機構の研究:リン酸化ネットワークを基軸として
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17K07432
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
笹部 美知子 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00454380)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞質分裂 / 細胞板 / フラグモプラスト / MAPキナーゼ / 微小管 / 微小管結合タンパク質 / プロテインキナーゼ / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞では、細胞分裂の後半に特異的に活性化するMAPKカスケードが細胞質分裂を制御する鍵となる制御系として機能している。このカスケードの下流の分子メカニズムを解明するために、昨年度までにシロイヌナズナの本カスケードの下流因子を生化学的手法により網羅的に探索し、下流因子候補タンパク質を60因子同定している。今年度は、それらの候補因子の一つ、キネシンファミリーに属する因子に着目し機能解析を進めた。このキネシンは、シロイヌナズナの培養細胞においてM期特異的な発現パターンを示し、シロイヌナズナ個体においても分裂細胞特異的に発現していることが分かった。GFP融合タンパク質を用いて細胞内局在を解析したところ、本タンパク質は分裂時にフラグモプラストを含むM期微小管構造体に局在することが明らかとなった。また、このタンパク質は推定MAPKリン酸化サイトを複数有していたが、in vitroリン酸化解析の結果、細胞質分裂を制御するMAPK MPK4により、N末端側の1カ所が特異的にリン酸化されることが分かった。このサイトに変異を導入したMAPK非リン酸化型コンストラクトをドミナントネガティブの効果を期待して培養細胞に導入し過剰発現させたところ、フラグモプラストの拡大成長が部分的に阻害され、微小管構造体の崩壊や細胞板形成の異常が引き起こされた。これらの結果は、本タンパク質のMAPKによるリン酸化がフラグモプラストの拡大成長と細胞板の形成に関与していることを示唆しており、本因子が細胞質分裂を制御するMAPKの下流因子として機能している可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに同定している細胞板形成に関わるMAPキナーゼカスケードの標的分子の中から、本年度は候補因子の一つについては生化学的、細胞生物学的な詳細な解析を進め、新規標的分子の可能性が高い候補因子を同定することができた。研究はおおむね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
MPK4の新規基質候補として同定されたキネシンについて、個体レベルでの解析及び遺伝学的解析を現在進行している。ドミナントネガティブ型の過剰発現体や、変異体の表現型の解析を行い、細胞板形成時の分子機能を明らかにする。これまでに同定された下流因子の候補には、膜輸送に関わると考えられる因子が含まれており、この因子についても現在機能解析を進めている。さらに今後は、機能的に相互作用している可能性がある下流因子について両因子の詳細な分子機能や多重変異体を用いた遺伝学的相互作用の解析を進め、多段階の共役的な素過程を含む細胞板形成過程を統御する分子メカニズムの全容解明を目指す。
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Causes of Carryover |
植物及び培養細胞の維持のためアルバイトを雇用予定であったが、適当な人材を見つけることができず雇用することができなかったため、謝金分の差額が生じた。次年度は、差額予算でのアルバイト雇用を予定している。また、研究の進展に伴い、当初予定していなかった生化学的実験を実施する必要が生じているので、実験消耗品費としても使用を予定している。
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[Presentation] 植物細胞の伸長と分裂方向を決める因子の探索:セルロースおよび表層微小管ダイナミクスとイノシトールリン脂質の局在解析2018
Author(s)
鈴木伶奈, 飯田智子, 橋場真子, 高橋雛子, 樋口菜々美, 伊藤千尋, 渡邊悦子, 上村松生, 平野朋子, 佐藤雅彦, 笹部美知子
Organizer
東北植物学会第8回大会