2018 Fiscal Year Research-status Report
水分屈性初期応答の分子機構―水分勾配刺激が生物学的情報へ変換される場と仕組み
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17K07433
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
宮沢 豊 山形大学, 理学部, 教授 (00342858)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水分屈性 / 水分勾配刺激 / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の解析から,根の皮層細胞におけるMIZ1機能とアブシシン産応答が必要であることが明らかとなった。一方,アブシシン酸応答や合成欠損変異体の表現型が水分屈性の低下にとどまるのに対して,miz1やmiz2変異体は水分屈性を完全に欠損する。このことは,これら遺伝子産物の機能がアブシシン酸応答に先んじて水分屈性に必要であることを示唆する。そこで,今年度はMIZ2機能が必要とされる組織の同定とMIZ1機能との関係について解析を行った。組織特異的プロモーターを用いて野生型MIZ2をmiz2変異体背景で発現させる系統を作出し解析した結果,野生型MIZ2を皮層細胞で発現するmiz2系統でのみ,水分屈性の回復が認められた。一方,変異型miz2タンパク質を皮層細胞で発現させてもmiz2変異体の表現型は相補されなかったため,水分屈性の発現には皮層細胞でのMIZ2機能が必要であると考えられた。一方,他の組織で野生型MIZ2を発現する系統の中には皮層細胞ほどではないものの,miz2変異体の表現型をマイルドにする系統が認められた。そこで,これらの系統間での掛け合わせを実施し,水分屈性発現時に皮層細胞以外でMIZ2機能を必要とする細胞群がないかを検証している。また,野生型およびmiz2変異体背景でMIZ1-GFPを発現する系統を用いて解析した結果,水分勾配刺激時に皮層細胞におけるMIZ1-GFPの細胞内局在が野生型では変化するのに対して,miz2変異体においては変化しないことが観察された。また,水分屈性発現時にみられたようなMIZ1-GFPの局在変化は重力屈性発現時には認められなかったことから,この局在変化が根の屈曲によるものではなく,水分勾配刺激によるものであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度の成果に基づき研究を進めた結果,根の皮層細胞が水分屈性初期応答の起こる場である可能性がより高くなるとともに,水分屈性初期応答の分子機構にMIZ1のMIZ2依存的な細胞内局在の変化が必要である可能性を見出すことができた。このmiz1局在変化は,本研究で目的に掲げる水分勾配刺激の生物学的情報への変換に関わる分子機構の解明に重要であると考えられるため,課題を非常に順調に進めることができていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は,論文化へのまとめの実験を進めるとともに,今年度MIZ1局在変化とアブシシン産応答の関係を明らかにする。すなわち,水分勾配刺激によってアブシシン酸内生量の増大が起こる場所の特定を進める。この際,単に合成系の活性化だけでなく,貯蔵されている不活性型グリコシルエステルから活性型アブシシン酸についても解析を行う。
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