2018 Fiscal Year Research-status Report
液胞形成に伴って起こる新奇オートファジーの機構解明
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17K07434
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
森安 裕二 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20200454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 康子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30194921)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 液胞形成 / オートファジー / ミニプロトプラスト / タバコ培養細胞 / シロイヌナズナ培養細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. シロイヌナズナATG遺伝子破壊培養細胞を作製した。本研究の申請時にシロイヌナズナATG5遺伝子破壊培養細胞を作製していたが、2017年10月~12月になって野生型培養細胞が混入していることがわかるというトラブルが生じた。そこで、2017年度後半から2018年度にかけてATG5遺伝子破壊培養細胞(atg5細胞)を新たに作製し直した。さらに、ATG2遺伝子破壊培養細胞(atg2細胞)と野生型培養細胞(WT細胞)も作製した。 2. これらのシロイヌナズナ培養細胞のオートファジーに関連した性質を調べた。WT細胞、atg5細胞、atg2細胞をプロテアーゼ阻害剤を入れたショ糖飢餓培地で培養することによって、細胞内プロテアーゼ活性を阻害した条件下で栄養飢餓状態にすると、細胞内にすでに存在していた大きな液胞内に細胞質が蓄積した。atg5細胞やatg2細胞でも、WT細胞に比べて量は少ないものの既存の大きな液胞内に細胞質が蓄積した。この結果は、植物細胞はATG遺伝子に依存しないオートファジー経路を持っており、この経路が栄養飢餓に応じて亢進することを示している。 3. 液胞形成を行なっているタバコBY-2ミニプロトプラストよりタンパク質を抽出し、SDS-PAGEによる解析を開始した。 4. 液胞形成を行なっているタバコBY-2ミニプロトプラストを電子顕微鏡で解析し、プロテアーゼ阻害剤を用いなくても、形成されて間もない小さな液胞内には細胞質が存在しており、その後、液胞内の細胞質が消化されることで液胞が完成することを見出した。すなわち、液胞はオートファジーを介して形成されることを端的に示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
シロイヌナズナ培養細胞を再度、作製するのに時間を要し、さらに、作製した培養細胞のオートファジーに関連した性質を調べる実験に予想以上の時間を要したので。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 研究実施計画通りに、シロイヌナズナ培養細胞からミニプロトプラストを調製し液胞形成を観察して、液胞がATG遺伝子に依存しないオートファジー経路を介して形成されることを証明するとともに、液胞形成に伴って起こるオートファジー経路と、atg2細胞やatg5細胞で観察されたATG遺伝子に依存しない既存の液胞を分解コンパートメントとしたオートファジー経路との関係を調べる。 2. タバコミニプロトプラストを用いた解析では、研究実施計画に従って、電子顕微鏡による「核周辺に現れるER由来の特殊な構造」の解析を進めるとともに、SDS-PAGEや二次元電気泳動による液胞形成に関連したタンパク質の探索を続ける。 3. 以上のシロイヌナズナ培養細胞とタバコBY-2細胞を用いた「液胞形成に伴うオートファジー経路」の解析に加えて、コケ植物ヒメツリガネゴケを用いた「液胞形成に伴うオートファジー経路」の解析を行う。理由は、最近、他の研究者によって、植物の老化時に特別な液胞が新規に形成されることが報告されたからである。本研究の研究代表者はこれまで、ヒメツリガネゴケを用いた植物老化とオートファジーの研究を進めてきており、ヒメツリガネゴケでも、老化時に特別な液胞が形成されるのかどうか、もし形成されるとしたら、その特別な液胞がオートファジーを伴って形成されるかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通り使用したが多少の誤差が生じたので、計上していた旅費(10万円)を実験に必要な物品費に回すなどの変更を加えたが、結果的に、執行額に約6万円の余りが生じた。余った額は次年度分として請求している額と合わせて、次年度の使用計画通りに使用する。
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Research Products
(1 results)