2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K07438
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
今村 壮輔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (70548122)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 窒素代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒素は、植物の生長を左右する重要な栄養元素である。窒素に関する研究としては、窒素量の増減に応じた遺伝子発現など、窒素量変化に伴う最終的な応答反応については良く理解されている。その一方で、窒素量の変化を、植物細胞がどの様な機構で感知しているのか、という点については、多くの制御系・実験系が複雑であるなどの理由で解明がなされていない。そこで本提案では、単純な制御系を持つと考えられる単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeに着目し、実験材料として用い、窒素源欠乏シグナルの受容や、そのシグナル伝達機構の解明を目的としている。 本年度は、窒素源欠乏シグナルの受容や、そのシグナル伝達機構解析の基盤として、窒素同化に関わる転写因子複合体を細胞内から精製するための実験基盤を整備することを試みた。まず、転写因子に3種のタグ(FLAG/Protein A/His)を付加可能な発現ベクターを構築した。その後、C. merolaeに形質転換するための配列を当該ベクター付加し、PCRにて目的断片を増幅後、C. merolae に形質転換を行なった。その結果、形質転換体を多数取得することに成功し、PCR解析にて目的の断片がC. merolaeゲノム中に挿入されていることを確認した。しかし、3種のタグに対する抗体を用いたウェスタン解析の結果、細胞内での発現を確認することができなかった。このことから、ゲノム上の配列をシーケンスにて解析を行なったところ、変異が観察された。よって、当該転写因子に3種のタグを付加することが細胞にとって不都合であることが推測された。そこで、FLAGのみを付加した株の取得を試みたところ、FLAGに融合した当該転写因子の発現を観察することができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、転写因子複合体を細胞内から精製することを目指していた。しかし、当該株の取得に時間を要しているため、複合体精製実験を行う段階になっていない。しかし、FLAG融合発現株が取得できたことから、今後の解析で今年度の遅れを取り戻すべく研究を遂行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
3種のタグを付加することが、当該転写因子の機能に影響を与えたことから、(1)FLAG単独発現株の取得を行う。また、精製実験に供するレベルのタンパク質量が存在しないことが想定されるため(2)各種タグ付き過剰発現株の取得も同時に行う。また、ゲノム上の位置効果によって3種のタグが影響をもたらしたことも考えられるため、(3)転写因子がコードされているゲノムとは異なる位置への遺伝子の挿入、についても検討する。これらの実験を行うことにより、確実に当該転写因子を細胞内から精製する実験系を確立して研究を遂行する。
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