2018 Fiscal Year Research-status Report
GUNプラスチドシグナル伝達の分子機構と植物陸上化にともなう進化の研究
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17K07444
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
望月 伸悦 京都大学, 理学研究科, 助教 (60280939)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 色素体機能 / 光合成 / プラスチドレトログレードシグナル / PPRタンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
(A)in vivoにおけるGUN1のDNA・RNAターゲットの探索、GUN1相互作用タンパクの同定・解析:3-5日齢の実生から全細胞抽出液を調製し、GUN1-tag抗体を用いて免疫沈降を行った。コントロールのサンプルと異なるバンドパターンが得られたため、GUN1が働く複数の条件でパターンの変化を検討している。 (B)gun1サプレッサー変異の単離・解析、プラスチド非依存的に光形態形成を行う突然変異体の単離・解析: (B-1)GUN1ox株を親株に、弱光+リンコマイシン(LIN)存在下で、gun1と同様の表現型を示す変異体候補429株を選抜した。次世代で表現型の確認、GUN1タンパク質の発現量を検定し、有望な27株について、遺伝学的解析を進めている。(B-2)gun1遺伝子破壊株についてEMS処理で変異誘起処理を行い、gun1遺伝子破壊株が示す低濃度LIN感受性表現型をサプレスする突然変異体候補を143株取得した。現在二次・三次スクリーニングおよび戻し交配などの遺伝学的解析を進めている。上記突然変異株について、日本植物生理学会年会で発表した。 (C)シャジクモ類・蘚類・苔類・シダ類・裸子・被子植物GUN1オーソログの構造比較および、GUN1機能の保存性の解析、ゼニゴケ・ヒメツリガネゴケにおけるGUN1機能の解析:シャジクモChara brauniiのGUN1オーソログ(CbGUN1)cDNAクローンを作製し、シロイヌナズナGUN1プロモーターと連結した。これをシロイヌナズナ野生型株およびgun1遺伝子破壊株に導入し、形質転換体を得た。 (D)その他:プラスチドシグナルに関わると報告されてきたABI4遺伝子が、従来報告されてきた働きを持たないことを、イギリス・ドイツのグループと共に発見し論文として報告した。また、2つの国際学会でも報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(A)GUN1相互作用因子の検索については、GUN1-tagタンパク質の発現量が低く、共免疫沈降するタンパク質の検出が難しい。そのため、GUN1タンパク質の発現が最適となる生理条件の検討に時間がかかった。現在、その条件において実験を進めており、計画の遅延を取り戻しつつある。
(B)GUN1ox株を親とするgun1様表現型を示す株の遺伝学的解析は順調に進展している。また、gun1変異のサプレッサースクリーニングについても、予定より早く一次スクリーニングが終了したため、おおむね予定通り計画が進行している。
(C)シャジクモGUN1(CbGUN1)GUN1オーソログcDNAクローンを取得したが、公開されている遺伝子情報と一致しない部分が見つかったため、その確認に時間がかかった。詳細な検討の結果、データベースの公開情報に誤りがあるとの結論に達したため、取得したクローンを用いて計画を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)GUN1と共免疫沈降するタンパク質について、早急に候補を絞りMS/MSによる同定を進める。ChIP-seqについても条件検討を進める。
(B)gun1様突然変異株について有望株を絞り込み、親株(GUN1ox)と戻し交配を行い、F2個体を用いて原因遺伝子の同定を行う。gun1サプレッサーについても同様の解析を進め、年度中盤には遺伝子の同定を終える。
(C)シャジクモCbGUN1を導入した形質転換シロイヌナズナの表現型解析を年度中盤までに終える。最近GUN1タンパク質が葉緑体におけるRNAエディティングに関わることが報告された。一方、ゼニゴケの葉緑体ではRNAエディティングが起こらないため、GUN1がどのような働きを持つのか分からない。ゼニゴケGUN1を導入したシロイヌナズナgun1変異体において、RNAエディティングが回復するか検討する。また、ゼニゴケgun1遺伝子破壊株で葉緑体のRNA修飾に変化がないか調べる。
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Causes of Carryover |
前述のように、共免疫沈降や突然変異体に関するプロテオームおよびNGS解析が当該年度中に実施できなかったため、次年度にまとめて行う必要がある。その結果、本年度に計画していた支出が減ったため。
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